アサ科・グミ科・バラ科

バラ目

  アサ科(カナムグラ)

  グミ科(ナワシログミ)

  バラ科(ノイバラ、テリハノイバラ、カナメモチ、トキワサンザシ、タチバナモドキ、ヒマラヤザクラ)

      (参)ジュウガツザクラ、フユザクラ、アーコレード


カナムグラ(Humulus japonicus)

<バラ目・アサ科・カラハナソウ属>

アサ科カラハナソウ属のつる性1年草で、在来種。雌雄異株。

日本では北海道から本州、四国、九州と全国の日当たりの良い道端などによく自生している。

海外では、中国、台湾などに分布し、北米では園芸用に栽培されたものが野生化している。

茎や葉柄に刺があり、物によく絡み付くので、取り除くのには骨が折れる。

葉は対生し、葉身は長さ5~10cmで掌状に5~7裂し、基部は心形。

葉表には粗毛が映え、葉裏には黄色い小腺点がある。

花期は8月~10月で、雌花は小さな花序に固まって付き、子房は1個、花柱は2個付く。

雌花の苞は、緑色で濃紫色の斑紋があるが、花後に肥大して、果期には全体に紫褐色帯びて反り返る。

雄花は大きな円錐花序に多数付き、萼片は5個、オシベも5個あり、短い花糸に大きな葯が付く。

果実は痩果で、直径5mm前後の円形で、断面は厚いレンズ型。果皮は薄くて、まばらに毛がある。

2012/10/24

多摩川への道路脇の金網に絡み付いているカナムグラが、花を咲かせているのに気が付きました。

2012/10/24 <雄株/雄花>

雄株では花茎を伸ばして、穂状の花を多数付けています。

雄花は淡緑色で、5個の花被片と大きな5個の雄しべの葯が目立ちます。

2012/10/24 <雌株/雌花>

雌株では、雌花は穂状に下向きに付きます。

苞に包まれて白く見えているのはメシベの柱頭で、二股に分かれています。

成熟した雌花は、後ろに見えているように赤紫色の模様が入ります。

2014/10/28           2014/11/20           2012/10/24

撮影時期はバラバラですが、受粉後の雌花の花序の成長する様子です。

受粉すると苞に赤紫色の模様が入り、徐々に濃くなっていきます。

そして、成熟とともに花序が長くなって垂れ下がってきます。

2012/10/27

いつもの散歩コースから10kmほど上流の河川敷で見かけた、カナムグラの雄株です。

一面を覆い尽くして、大きな雄花の円錐花序を立ち上げていました。

この場所では雄株ばかりで、雌株は確認できませんでした。

2012/12/16

カナムグラの種子です。表面に不規則な模様が入っています。


ナワシログミ(Elaeagnus pungens)

<バラ目・グミ科・グミ属>

グミ科グミ属の常緑低木で、タワラグミ、トキワグミの別名を持つ。

日本では、本州中南部から四国、九州にかけて海岸近くに多い。

海外では、中国中南部に自生する。

楕円形の葉は厚くて硬く、互生。若葉の表面には一面に星状毛があり、白っぽい艶消し状になる。

時間の経過と共に星状毛はなくなり、艶のある新緑になる。

花期は秋で、花は両性か単性。淡黄色の筒状の萼は、先が4裂し、オシベが4本付く。花弁はない。

開花後、筒状の萼の基部が果実を包み、肥厚して核果様になる。翌年の5月~6月に赤く熟す。

なお、果実の先には、萼筒の上部が残る。

2015/10/23

多摩川の河川敷で、ナワシログミが花を咲かせていました。

咲き始めの頃は、4裂した萼の内側は純白です。

その萼の外側は淡黄色で、褐色の斑点が点々と付いています。

また、正面から撮った写真には、4本のオシベが写っています。

2015/11/13

先月、花を咲かせていたナワシログミですが、気が付くと果実ができていました。

結実した時期によって、大きさはまちまちですが、来春には一回り大きくなって、赤く熟します。

果実のその後に関しては、「春の野草/グミ科」をご覧ください。


ノイバラ(Rosa multiflora)

<バラ目・バラ科・バラ亜科・バラ属>

バラ科バラ属の落葉つる性低木で、日本のノバラの代表種。

沖縄以外の日本各地の山野に多く自生する。

日本以外では朝鮮半島に分布する。

樹高は2mほどになり、茎は枝分かれして直立するが、他のものに寄り掛かって這い登ることも多い。

葉は互生し、長さ10㎝ほどの奇数羽状複葉で、小葉数は7~9個。

小葉は楕円形で細かい鋸歯があり、表面に艶がない(テリハノイバラは艶がある)。

花期は5月~6月で、枝先に円錐花序枝を付け、白色または淡紅色の花を多数付ける。

花は直径2cmほどで、5個の花弁は倒卵形。オシベは多数。

メシベは無毛で、花柱はゆるやかに合着して柱状になる。

果実に見えるのは偽果で、萼筒が肥大したもの。直径8mm前後の卵球形で、秋に赤く熟す。

2012/10/27

多摩川のいつもの散歩コースから10kmほど上流の河川敷で見かけました。

既に花は終わっており、赤い果実だけが多数付いていました。

葉は、奇数羽状複葉で小葉数は7~9枚、小葉には鋸歯があり、表面につやがないのが特徴です。

花は見られませんでしたが、5弁の白花で、次のテリハノイバラよりは小さく、多数付くそうです。

花が多いのは、果実が多数付いていることからも想像できます。

ノイバラとテリハノイバラ

花の見かけはよく似ていますが、テリハノイバラは大きい分、オシベが小さく見えます。

ただ、花の大きさやオシベの長さなどには変異があるので、花だけでは決めきれません。

両者の判別には、その葉を見るのが確実です。

名前の通りテリハノイバラの葉は、革質で厚みがあり、表面に強い光沢があるのが特徴です。

ノイバラの葉は、表面にしわがあり、光沢がないので葉で両者を見分けることができます。


テリハノイバラ(Rosa luciae)

<バラ目・バラ科・バラ亜科・バラ属>

バラ科バラ属のつる性落葉低木で、日本では本州から四国、九州に分布する。

海外では、朝鮮半島から中国、台湾、フィリピンに分布する。

茎には鉤形の刺があり、立ち上がらず、地を這って伸びる。

葉は互生し、長さ8㎝前後の奇数羽状複葉。小葉は2~4対で、頂小葉と側小葉の差はない。

小葉は長さ2㎝程の楕円形で、両面とも無毛で厚みがあり、鋭い鋸歯がある。葉表に光沢がある。

花期は6月~7月で、枝先に直径3㎝程の白花を数個付ける。

花弁は5個で、オシベは多数ある。花柱は合着し、毛がある。

偽果は直径8㎜程の卵球形で、真っ赤に熟す。

2012/10/27

多摩川のいつもの散歩コースから10kmほど上流の河川敷で見かけました。

ノイバラは河川敷の上の方で見られたのですが、その直ぐ下の護岸ブロックの上で花を咲かせていました。

ノイバラの花だと思って写真を撮ったのですが、調べるとテリハノイバラと分かりました。

よく似ていますが、花が一回り大きく、花数は少ないこと、葉の表面に光沢があることで識別できます。

テリハノイバラの花期は、6月~7月で、この時期はノイバラ同様に果実なっている時期です。

それが、まだ、蕾や花弁が散り始めたものもあり、次々と咲いているように見えます。

狂い咲きなんでしょうか?時期外れの11月に近い今頃、花を見られるとは。


カナメモチ(Photinia glabra)

<バラ目・バラ科・モモ亜科・ナシ連・ナシ亜連・カナメモチ属>

2015/4/22             2014/5/7            2015/11/12

バラ科カナメモチ属の常緑小高木で、在来種。照葉樹林の低木である。

日本では、本州中部以南から四国、九州にかけて自生している。海外では、中国にも分布する。

新芽の色が美しい紅色なのが特長で、その中でも特に紅色が強い個体を「ベニカナメ」と呼ぶ。

なお、葉が赤みを帯びるのは、新葉のときのみで、時間と共に普通の緑色の葉になる。

和名の「カナメ」とは扇の「要」のことで、実際、扇の要に用いられていた事に由来する。

また、「モチ」とはモチノキ(黐の木)に似ていることに由来するといわれている。

樹高は3~5mで、幹は暗褐色になり、老木は樹皮が縦に裂ける。

葉は互生し、長さ5~9cmの長楕円形で、先は尖り、基部は楔型。縁には細鋸歯があり、革質で無毛。

花期は5月で、茎先の複散房花序に多数の小花を付ける。花は直径7~8mmで、白い5弁花。

花弁は長さ2~3mmの広卵形で、基部に軟毛があり、最初は平開しているが、後に反り返る。

オシベは20個で、花弁より若干短いが、花弁が反り返るとオシベが目立つようになる。

果実は長さ5mm前後のナシ状で、赤く熟し、光沢はない。

 

2014/5/7 春、新芽と共に花序が伸び出してきます。

2014/5/7 白い五花弁の花が、一斉に咲きだしましたが、葉の赤みは薄くなっています。

2015/11/12 花後、見立たない緑色だった果実も、赤く色付き初め、晩秋には真っ赤になります。

2014/5/7               2014/6/3             2014/6/3

5/7 摩川への道路脇で、満開になっている本種をみかけました。

白い五花弁の花ですが、花弁が後に反り返っているので、オシベがやたらと目立ちます。

6/3 花が終わり、果実が大きくなり始めています。

まだ、枯れたオシベやメシベが残っていました。

2014/9/29             2014/11/17           2014/11/17

2014/12/3             2014/12/3

夏が過ぎ、9月も末になると果実もふっくらと膨らんでいました。

11月の初め頃には黄緑がかっていた果実も、中旬には橙色から赤くなったものまで混在です。

それも12月初めには、ほとんどが真っ赤に熟していました。


トキワサンザシ(Pyracantha coccinea)

<バラ目・バラ科・モモ亜科・ナシ連・ナシ亜連・トキワサンザシ属>

バラ科トキワサンザシ属の常緑低木で、ヨーロッパ南部から西アジア原産。

日本では、本州から四国、九州にかけて植栽、あるいは、一部野生化している。

樹高は2~6mで、樹幹は直立して枝には刺があり、褐色の毛が生えているが、後に無毛。

葉は互生し、長さ2~4cmの倒卵形で、縁に細かい鋸歯がある。

葉先は丸くて、先端側が最も幅が広く、ピラカンサの中では最も幅が広い。

花期は4月~5月で、葉腋に散房花序を付け、直径10mm前後の白い5弁花を多数付ける。

オシベは20個で、花糸の長さは2㎜弱である。萼片は5個ある。

果実は、直径5~8㎜の扁球形で、晩秋に真っ赤に熟し、一際、目を引く。

2012/10/27

いつもの散歩コースより10kmほど上流の河岸で見かけたトキワサンザシです。

所々で大きな木(といっても樹高は2mほどですが)が、真っ赤な実を付けているので目立ちます。

トキワサンザシの葉は、先に行くほど幅が広くなり、両面とも無毛、縁には低い鋸歯があります。

果実は、鳥にとってもあまりおいしくはないようで、他に餌がある時期には鳥はきません。

他に餌がなくなる時期(12月~1月くらい)になると、鳥が集まってきます。

ある都内の場所で、ヒヨドリが1日で食べつくしたのを見たことがあります。

そうやって食べられた実から、鳥の糞と共にあちこちに種がばらまかれて野生化しているのでしょうね。

2013/5/14             2013/5/23             2013/6/17

2013/7/2            2013/10/7             2013/10/18

いつもの散歩コースの途中にある公園脇で見かけたトキワサンザシです。

今年は、5月の開花、その後結実し、その果実が熟すまでを追ってみました。

10月に入って色付きはじめると、短期間のうちに熟してきれいな色になりました。

2013/10/18

公園脇のトキワサンザシは、河川敷で見たものより大きく、樹高が5mを超える巨木です。

そのため、花穂も大きく、果実も鈴生り状態で、真っ赤な房がぶら下がっているように見えます。

2013/11/15

公園脇のトキワサンザシですが、11月に入って真っ赤に熟していました。

ムクドリが食べつくすまで、しばらくの間は赤と緑のコントラストを楽しめそうです。

※ 正月明けには、すっかり無くなっていました。休み中に食べつくされたようです。


タチバナモドキ(Pyracantha angustifolia)

<バラ目・バラ科・モモ亜科・ナシ連・ナシ亜連・トキワサンザシ属>

バラ科トキワサンザシ属の常緑低木で、ヨーロッパ南部から西アジア原産。

日本では、本州から四国、九州にかけて植栽、あるいは、一部野生化している。

樹高は2~4mで、幹は灰褐色で横長の皮目があり、鋭い刺がある。

若枝は紫褐色で、淡黄色の毛が密生しているが、後に毛は無くなる。

葉は互生したり束生したりし、長さ2~6cmの狭長楕円形。鋸歯は少なく、ほぼ全縁。

葉の裏面には灰白色の綿毛が密生する。若木の葉では、葉表にも毛があるが、後に無くなる。

花期は4月~5月で、葉腋に散房花序を付け、直径8mm前後の白い5弁花を多数付ける。

オシベは20個で、花糸の長さは2㎜弱である。萼片は5個ある。

果実は、直径5~6㎜の扁球形で、晩秋に橙色に熟し、一際、目を引く。

トキワサンザシとの違いは、葉が全体に細く、ほぼ等幅になること。

そのため、葉がトキワサンザシより細いことから、ホソバノトキワサンザシの別名がある。

葉の縁に鋸歯がなく、全縁であり、葉の裏に綿毛が密集することでも、区別できる。

2012/10/27

トキワサンザシと同じ場所に生えていたため、撮影した時は、未成熟のトキワサンザシと思っていました。

しかし、後で写真を見ていてタチバナモドキと分かりました。

トキワサンザシとの違いは、葉が全体に細く、ほぼ同じ幅(トキワサンザシは先の方が広くなる)になること。

葉の縁に鋸歯がなく、全縁であり、葉の裏に綿毛が密集することで、区別できました。


ヒマラヤザクラ(Prunus cerasoides)

<バラ目・バラ科・モモ亜科・モモ連・スモモ属・サクラ亜属>

バラ科スモモ属サクラ亜属の落葉高木で、インドのカシミール地方から中国の雲南省が原産地。

亜熱帯の標高1100~2300メートルの地域が原産地のため、高温多湿の日本では世話が必要。

日本へは、1968年にネパール王室のビレンドラ元国王から贈られた。熱海市に植樹されている。

その後、小石川植物園などでも見られるようになった。

葉は楕円形で互生し、葉の先は尖り、縁には粗い鋸歯がある。

花期は11月~12月で、一重の淡い紅色の花をつける。

果実は、15mm程になり、生食でも、料理にも使われる。なお、種子も生食可能で、料理にも使われる。

変わったところでは、果実や葉を濃い緑色用の染料として利用される。

2014/11/20

多摩川への途中に植栽されているヒマラヤザクラが、満開状態になっていました。

以前から、植えられているのは知っていたのですが、昨年は、パラパラとさいている程度でした。

ところが、今年は、数本ある内の1本がたくさんの花を付け、ソメイヨシノのような咲き方です。

他の数本は、少し花が付くか、全く花が付いていないので、数mの差で何が違ったのでしょうか。

高山系の植物で、世話が必要な樹とのこと、何かちょっとした差異が生んだ結果なのでしょう。

2014/11/21

昨日、曇り空だったので、今日、改めて撮り直してみました。

青空をバックにした写真は、春のサクラの季節と勘違いしそうです。

この時期に咲くサクラは、極限られた種類で数も少ないので、メジロやヒヨドリが蜜を求めてきていました。


晩秋から初冬に咲くサクラ

晩秋から初冬に咲くサクラとしては、ヒマラヤザクラよりも以下の2種が有名。

ジュウガツザクラとフユザクラは、11月~12月に開花後、パラパラと春まで続き、春にもう一度開花します。

一方、ヒマラヤザクラの方は11月~12月の開花のみで、その後は真冬に新葉を展開します。

近年、イギリスでオオヤマザクラとコヒガンザクラを交配して作出されたアーコレードも増えています。

イギリスでは春に咲くだけですが、日本では春と秋の二期咲きが楽しめます。

 

ジュウガツザクラ(Prunus × subhirtella cv. Autumnalis)

<バラ目・バラ科・モモ亜科・モモ連・スモモ属・サクラ亜属> 

マメザクラとコヒガンザクラの雑種で、開花は10月頃から翌春まで断続的に咲く。

花は、小輪の八重咲きで、花弁は5~18枚と一定していない。

晩秋に咲く花は、春に咲く花より小さく、花弁にねじれがある。

花は白色のものが多いが、淡い紅色、濃紅色などもある。

                     2014/11/24

神奈川県立相模原公園で、フユザクラと同じ場所にジュウガツザクラも植えられていました。

一回り小振りの八重の花、波打つ花弁から、フユザクラとは見た目が異なります。

花弁の色も、白ではなく、淡いピンクを帯びた色合いで、遠目にも違いが分かります。

 

フユザクラ(Prunus ×parvifolia 'Fuyu-zakura')

<バラ目・バラ科・モモ亜科・モモ連・スモモ属・サクラ亜属> 

ヤマザクラとマメザクラの雑種で、開花は11月~12月と4月の2度咲き。

花は中輪の一重咲きで、5花弁。花色は白色。

群馬県鬼石町の桜山公園は、本種が多数植えられているサクラの名所。

                       2014/11/24

神奈川県立相模原公園で以前見かけたフユザクラ、その様子を見に行ってきました。

以前見た時は、まだ、細い若木でしたが、ずいぶん大きくなっていました。

前に見た時はパラパラとしか付いていなかった花ですが、今は、花数も増え、桜らしい容姿です。

 

アーコレード(Cerasus 'Accolade')

<バラ目・バラ科・モモ亜科・モモ連・スモモ属・サクラ亜属・サクラ節> 

バラ科スモモ属サクラ亜属の落葉高木で、イギリスで作出された品種である。

オオヤマザクラ(別名:ベニヤマザクラ/エゾヤマザクラ)とコヒガンザクラを交配させたもの。

イギリスでは春に1回咲くだけであるが、日本では春と秋の二期咲きとなる。

花は大輪で、直径30mmほどの半八重咲で、ジュウガツザクラより大きく、色も濃い目である。

                    2018/11/29

町田市にある薬師池公園の池の畔で桜が咲いていました。名板にはアーコレードと書かれていました。

見たことがない名前でしたので調べてみると、イギリスから逆輸入されたサクラだと分かりました。

この時期に咲くサクラの中でも、色の艶やかさでは抜きんでている気がします。