フトミミズ科・ナメクジ科・カニグモ科・ジョロウグモ科

ナガミミズ目

 フトミミズ科(ハタケミミズ)

有肺類・真有肺目・柄眼亜目

 オオコウラナメクジ上科ナメクジ科(ナメクジ)   (参)ヤマナメクジ

クモ目・クモ亜目・クモ下目

 チリグモ上科カニグモ科(ハナグモ)

 コガネグモ上科ジョロウグモ科(ジョロウグモ)   (参)コガネグモ、ナガコガネグモ


ハタケミミズ(Metaphire agrestis)

<ナガミミズ目・フトミミズ科・フクロフトミミズ属>

日本には200種を超えるミミズが生息しているといわれている。

その内で、よく見かけるのはナガミミズ目のフトミミズ科とツリミミズ科の仲間である。

ミミズの長さを測るのは難しいですが、フトミミズ科の方がツリミミズ科の倍くらいの長さがある。

ミミズは雌雄同体であるが、2匹が交尾して精子交換を行い、繁殖する。

ミミズの体内は、体節毎に隔壁で仕切られ、そこに体腔液の水圧をかけることで体型を維持している。

循環器として血管はあるが、呼吸器はなく、ガス交換は皮膚呼吸のみで行なっている。

手足がないので全身で匍匐前進し、夜間に行動する事が多い。

生息域は、北海道などの寒冷地ではツリミミズ科が多く、西日本などの温暖な場所ではフトミミズ科が多い。

2014/12/5

多摩川の河川敷を散歩していると、20cmを超える大きなミミズが道路を横切っていました。

昼間に移動しているのを見かけたのは初めてで、大概、見るのは干からびたミミズでした。

未舗装道路なので、ミミズの這った跡がくっきりと残り、ゆっくりですが横切るつもりのようです。

このままでは、踏まれてしまうと思ったので、小枝で拾い上げました。

危険を察知したのでしょう。黄色い液体を出してのたうっていましたが、なんとか草むらに移動させました。

俗にドバミミズと呼ばれるフトミミズ科のハタケミミズではないかと思われますが、確証はありません。

モグラ塚の主であるアズマモグラの大好物であり、ウナギ釣りの餌としても良く使われます。


ナメクジ(Meghimatium bilineatum)

有肺類・真有肺目・柄眼亜目・曲輸尿管下目・オオコウラナメクジ上科・ナメクジ科・ナメクジ属>

日本では北海道から本州、四国、九州と全国に分布している。

ナメクジは、ナメクジ科、コウラナメクジ科など数科の総称であるが、本種の和名でもある。

以前は、全国で普通に見られたナメクジであったため、「ナメクジ」の和名が付いたものである。

体長は80mm程の中型のナメクジで、人家から森林まで広く分布する。

触角は黒く、全身が灰褐色で背中に数本の黒い線がある。

ただ、最近は人家近くでは、小型のチャコウラナメクジ(コウラナメクジ科)の方が幅を利かせている。

ナメクジの複数の科は同じ系統ではなく、複数の系統のカタツムリから進化(ナメクジ化)したものである。

殻は徐々に退化していくので、平たい殻を持つもの、殻が体内に埋もれているものなどもいる。

ナメクジ化は、陸上に限らず、海の中でも起きており、ウミウシ類なども同様である。

近年、ナメクジには、海外から侵入した広東住血線虫が、寄生している可能性がある事が知られている。

成虫は、ドブネズミやクマネズミに寄生し、その糞から中間宿主に入って感染幼虫になる。

その中間宿主にアフリカマイマイ(沖縄、小笠原、奄美大島等に生息)や数種のマイマイ、ナメクジが含まれる。

それ以外にも、アジアヒキガエルなどのカエルや、淡水産のエビ、ジャンボタニシも含まれる。

また、ナメクジが通った後の粘液にも寄生虫が付着している可能性があるので、注意が必要である。

中間宿主を生で食べないことはもちろんであるが、触った後にはしっかり手を洗うことが必要である。

広東住血線虫に感染すると髄膜脳炎で死亡する事もあり、特効的な治療法もない。

中間宿主から沖縄など琉球諸島を連想されるかもしれないが、全国各地で検出されている。

2013/10/1

多摩川からの帰り道、道路脇のビワの木を這い下っているナメクジを見かけました。

普段見かけるナメクジより明らかに大型で、思わず撮ってしまいました。

名前を調べようと思ったのですが、嫌われ者のナメクジの資料は、どう退治するかの資料が大半。

種類が分かる資料は少なく、いろいろ探してやっとわかったのが、ただの「ナメクジ」でした。

以前は普通に見られたようですが、最近は、チャコウラナメクジに取って代わられているようです。

なお、参考までに、私が度肝を抜かれた最大級のナメクジを以下に紹介します。

日本最大級のナメクジ ヤマナメクジ

ヤマナメクジ(Meghimatium fruhstorferi)

<有肺類・真有肺目・柄眼亜目・曲輸尿管下目・オオコウラナメクジ上科・ナメクジ科・ナメクジ属>

日本原産のナメクジの1種で、日本では本州から四国、九州に分布している。

体長150mm程になる巨大なナメクジ。山地の樹幹や石の下などで見られる。

背面は灰褐色~黒褐色で、両側に縦に走る幅広の暗色の帯状の紋があり、足に近い部分では淡色になる。

また、背面中央にも暗色の斑文が縦に並び、背面~側面にかけて暗褐色の顆粒状の隆起が縞状にに並ぶ。

山間部や森林内に生息し、キノコを好んで食べる。

普段は倒木の下などに潜んでおり、夜間や雨などで薄暗いときは昼間も活動する。

冬には大木のうろの奥深くに潜って越冬する。

2011/7/23

美ヶ原で見かけたもので、普段、見かけるナメクジとは一線を画す大きさと太さです。

長さを測ってみましたが、手持ちのボールペンと同じでしたので、150mmはありました。

普段見かけるナメクジと異なり、丈夫そうな外皮で堅そうな感じでしたが、触る勇気はありませんでした。


ハナグモ(Ebrechtella tricuspidata)

<クモ目・クモ亜目・クモ下目・チリグモ上科・カニグモ科・カニグモ亜科・ハナグモ属>

ハナグモ科の代表種で、昆虫を餌とするため、花の近くでよく見られる。

日本では、北海道から、本州、四国、九州、南西諸島とほぼ全国に分布する。

日本以外では、アジアからヨーロッパにかけて広範囲に分布する。

幼体は、全身緑色であるが、成体の腹背には褐色の斑紋がある。

オスは体長4mm前後で、頭胸部、足は赤褐色で、腹部の中央付近が緑色になる。

メスは体長7mm前後で、頭胸部、足は鮮やかな緑色で腹部は白く、背面に独特の褐色斑がある。

網を張らず草花の陰に潜み,そこにくる小昆虫を捕食している。

2014/5/27

多摩川の土手を散歩中、ホソネズミムギの花茎で、ハナグモを見かけました。

何か黒っぽい獲物を捕えたようで、食事中のようです。

それだけなら写真を撮ることもなかったと思うのですが、腹部の模様を見て撮ることにしました。

明るい黄緑色の地に、赤褐色の模様があるのですが、それがムンクの「叫び」の顔に見えたのです。

拡大してみましたが、いかがでしょうか。見えませんか。

2015/4/9

ムベの花を撮影したのですが、その1枚にハナグモと思われるクモが写っていました。

花の中に潜り込み、カニグモ科の特徴である長い前脚2対を横に広げています。

広げた前脚が褐色なので、オスグモのようです(メスは緑色)。

残念ながら腹部は花の中なので見えません。

そのため、本種と断定はできませんが、たぶん合っていると思います。

ハナグモの腹部背面の模様

2016/8/27             2014/5/27

ハナグモのメスは、腹部が白く、背面に独特の褐色斑があります。

この褐色斑には変異があり、個体によってかなりの違いがあります。

左は、ひげを蓄えたオヤジの顔、右はムンクの「叫び」の顔に見えませんか。

いろいろ集めると、面白いコレクションになるかもしれません。


ジョロウグモ(Trichonephila clavata)

<クモ目・クモ亜目・クモ下目・コガネグモ上科・ジョロウグモ科・ジョロウグモ属>

2014/10/28           2014/11/10           2014/11/13

ジョロウグモ科ジョロウグモ属に属するクモで、日本在来種。

日本では、本州から四国、九州、南西諸島に分布し、森林や公園などでよく見かける。

日本以外では、朝鮮半島から中国、台湾、インドに分布する。

春に孵化して、秋に成虫となるが、巣の場所による餌の量が成虫の大きさに影響する。

幼体の腹部は複雑な斑模様であるが、成体になると模様が変わる。

メスの成体は、大きいものは30mmに達し、腹背は黄色と黒の縞模様で、下面に鮮紅色の紋がある。

オスの成体は、大きいものでも十数mmしかなく、腹背には黄色と褐色の縦縞の複雑な模様を持つ。

ジョロウグモの巣は、直径1mほどにもなる大型で、前後に補助網を持つ三重構造になる。

また、円網の縦糸は、中心から外に向かって順次二又に枝分かれしていく。

そのため、円網を構成する扇型の大きさが、中心部と外周部でもあまり変わらない特徴がある。

ジョロウグモは、「女郎蜘蛛」と書きますが、古くは「上臈(ジョウロウ)」であったとの説もあります。

「女郎」と「上臈(身分の高い人)」では、その意味が天と地ほどの差があります。

 

10/28 多摩川への道路脇で、大きく育ったジョロウグモのメスが営巣しているのを見かけました。

網も巨大で、1mを優に超え、前後の補助網もきれいに残っていました。

ちょうど逆光で網が輝き、長い脚の黄色部分がきれいに見えていたので、思わず撮影してしまいました。

11/10 上記と同じジョロウグモですが、一段と腹部が膨らみ、そのためか、模様まで違って見えます。

卵が順調に育っているのでしょう。産卵も近いのかもしれません。

11/13 別の場所で見かけたジョロウグモのメスの亜成体です。同じ種類と思えないほど模様が異なります。

同じ時期になっても、巣を張る場所で餌の量が異なり、それが成長にも大きく影響しています。

2014/11/10

左の2枚は、円網に注目してください。前後の補助網は、ピンボケになっています。

円網を構成する扇型の大きさが中心でも外周でも、その大きさにあまり差がないことが分かります。

右の1枚は、腹部の側面から下面にある鮮紅色の模様を斜め上からと撮ったものです。

ジョロウグモと良く似たクモ(コガネグモ、ナガコガネグモ) 

2014/10/28 ジョロウグモ(メス)  2015/8/1 コガネグモ(メス)     2012/8/24 ナガコガネグモ(メス)

コガネグモ(Argiope amoena)

<クモ目・クモ亜目・クモ下目・コガネグモ上科・コガネグモ科・コガネグモ属>

クモ目コガネグモ科に属するクモで、日本では、本州から四国、九州、南西諸島に分布している。

比較的大型のクモで、メスの体長は20mm程になる。オスは、小さく5mmに満たない。

メスの腹部には幅広い黄色と黒の縞模様があり、オスは茶色一色である。

ほぼ円形の円網を作り、網の中心で下向きに止まる。その際、前後2対の脚をX字状広げる。

なお、本種は攻撃性が強く、古くから「クモ合戦」に使われている。

 

ナガコガネグモ(Argiope bruennichi)

<クモ目・クモ亜目・クモ下目・コガネグモ上科・コガネグモ科・コガネグモ属>

クモ目コガネグモ科に属するクモで、日本では、北海道から本州、四国、九州、南西諸島に分布している。

比較的大型のクモで、メスの体長は25mm程になる。オスは、小さく10mmほどになる。

メスの腹部には黄色と黒と白の縞模様があり、オスも似た模様を持つがあまりはっきりとはしない。

和名は、コガネグモと比べて、腹部が細長いことに由来する。

円網を作り隠れ帯をつけることが多く、網の中心で下向きに止まる。本種は脚をX字状広げる事は少ない。

本種は、攻撃性が弱く、「クモ合戦」に使ってもあまり面白くないそうである。

 

ジョロウグモとコガネグモは、似ていることもあり混同されることも多いクモです。

体型的には、腹部が楕円形のナガコガネグモの方が似ているかもしれません。

こうやって並べると、その違いは良く分かると思います。

しかし、クモが苦手な方から見ると、どれも同じに見えてしまうかもしれませんね。