ツバキ科・ナス科

ツツジ目

  ツバキ科(オトメツバキ、サザンカ、ヤブツバキ)

ナス目

  ナス科(クコ、タマサンゴ、ムラサキイヌホオズキ)


オトメツバキ(Camellia japonica f. otome)

<ツツジ目・ツバキ科・ツバキ連・ツバキ属>

ツバキ科ツバキ属の常緑低木で、江戸時代から栽培されているユキツバキ系の栽培品種。

樹高は1~5mで、枝は密に茂り、樹勢はやや弱い。

葉は互生で、先の尖った楕円形で、鈍い鋸歯があり、表は濃緑色で光沢がある。

葉は、ヤブツバキよりも小さい。

花期は3月~4月で、花は直径5~7cmの淡紅色の千重咲きで、平開するが、花芯はない。

 

2015/4/2

多摩川の河川敷で見かけた背の低いツバキが、花を咲かせていました。

ピンクの花弁がたくさんあり、何重にもなって花芯が見えません。

後で調べて本種と分かりました。

ヤブツバキに比べて、花期が遅く、ボリュームのあるピンクの花弁が印象的です。


ヤブツバキ(Camellia japonica)

<ツツジ目・ツバキ科・ツバキ連・ツバキ属>

2013/3/5                2013/3/5

ツバキ科ツバキ属の常緑広葉樹で、日本原産種。

植物学上の種はヤブツバキであり、その別名として一般にツバキと呼ばれている。

多くの園芸品種が、ヤブツバキやユキツバキから作り出され、植えられている。

日本では、本州から四国、九州、南西諸島に分布し、海外では、朝鮮半島南部と台湾に分布する。

近縁種のユキツバキがあるが、標高の高い内陸部に分布し、ヤブツバキとはすみ分けている。

樹高は10~15mになり、幹は灰褐色~黄褐色で、滑らかである。

葉は互生し、長さ4~8cmの長卵形で、先が尖り、低い鋸歯がある。

葉は厚い革質で、表面は無毛で光沢がある。葉柄は長さ1cm前後。

花期は11月~4月で、花は直径5~7cmで、花色は赤が多いが白花もある。

原種は赤い一重の5弁花であるが、八重咲き、牡丹咲き等も作出されている。

オシベは多数あり、花糸が中間部で合着して筒状になる。

オシベの基部は花弁と合着し、花弁も筒状になるので、咲いたままの状態で落ちる。

花に蜜が多く。花筒の底に密が溜まる。

 

2013/3/5 多摩川への道路脇の公園で、咲いていたヤブツバキの園芸品種です。

花は1月下旬頃から咲きはじめていたのですが、撮影するのが遅くなってしまいました。

野生種に比べると、花が大きくて見ごたえがあります。

 

※ ヤブツバキとサザンカは、オシベの花糸の根元がくっついているかどうかで判別できます。

根元がくっついているのがヤブツバキで、くっつかないのがサザンカです。

サザンカの花がほぼ完全に平開するのに対して、ヤブツバキの花は平開しないことでも判別できます。

また、落椿といわれるように、ヤブツバキは花弁とオシベがくっついたまま落下します。

それに比べ、サザンカは花びらがバラバラに散ります。

2013/3/8

多摩川への道路脇の民家で見かけた白いヤブツバキの園芸品種です。

葉に斑が入っている所もありました。

2015/7/28                 2015/9/14

7/28 ヤブツバキの果実です。サザンカの果実の倍以上の大きさです。

サザンカでは種子は1つだけですが、ヤブツバキでは種子は3個のことが多いそうです。

9/14 気が付くと、ヤブツバキの果実が割れ、中から種子が顔を出していました。

種子は1つだけが残り、ゆらゆらとぶら下がっていました。

2015/10/28

河川敷で、種子が落果した後の平開した外皮を見かけました。

種子が1個のサザンカとは異なり、種子が3個のヤブツバキでは、中央に支柱があります。

外皮が裂開すると、種子がむき出しになり、支柱からはずれて落果するようです。

ヤブツバキの野生種

2013/4/2

大島で見かけた野生種のヤブツバキです。

ヤブツバキの花は、ほぼ終わりに近い季節でしたが、多少、咲き残っていました。

葉と花の大きさを比較してみてください。野生種の花が小さいことが分かると思います。


サザンカ(Camellia sasanqua)

<ツツジ目・ツバキ科・ツバキ連・ツバキ属>

ツバキ科ツバキ属の常緑高木で、日本固有種。

日本では山口県、四国南部から九州中南部、南西諸島等に自然分布する。

海外では、台湾、中国、インドネシアなどに分布する。

樹高は2~5mほどで、幹は灰褐色で平滑。葉は互生し、長楕円形で長さは5㎝前後。

葉は固く、両面とも光沢があって、主脈と葉柄には短毛がある。鋸歯は細かく鋭い。

花期は10~12月で、花の直径は7cm前後で、花柄は極短い。花弁は6個前後で平開する。

オシベは基部は合着しているが、ツバキのように筒状にはならない。

野生種の花色は白であるが、栽培品種には赤、白、ピンクなどさなざまな花色がある。

ツバキは、花が丸ごと落花するが、サザンカは花弁が1枚ずつ落ち、オシベはその後に落ちる。

2012/12/27

多摩川への道路脇の民家や公園で、サザンカの花が満開になっていました。

この辺りで目にするのは、園芸品種で、赤い花色の品種が多いです。

※ 後ろに見えているのは、富有柿で、野鳥の格好のえさ場になっていました。

2013/1/18

多摩川への道路脇の民家で見かけた白い八重のサザンカです。

赤よりも清楚には見えますが、茶色く変色するのが早いので、手入れが大変そうです。

2013/10/18

赤いサザンカの果実です。見た目は、ツバキの果実と変わりません。

まだ、はじける前の丸い状態ですが、花が咲き出す前には、大きく裂開して、種子がこぼれおちます。

2014/3/19

昨年から真っ赤な花を咲かせていたサザンカですが、すっかり花は終わってしまいました。

オシベごとボトッと落ちてしまうツバキと異なり、サザンカはオシベが枯れ残っています。

そのオシベも落ちた後は、毛の生えた子房が見えています。

授粉していれば、大きくなってくるはずですが、結実するのはそう多くはないそうです。

2014/4/10           2014/4/23           2014/5/9

うまく授粉できたものは少ないようですが、所どころで果実が大きくなり始めていました。

2014/7/10           2014/9/17           2014/10/14

7/10 果実は、二回りほど大きくなり、毛に覆われていた表面が、光沢のある表面に変わりつつあります。

9/17 果実は、一回り大きくなり、赤みを帯びてきました。

10/14 果実の裂開が始まりました。まだ、裂開途中ですが、さらに大きく開いて種子が落果します。

2015/10/22

外皮が全開したサザンカの果実ですが、種子が引っかかって残っています。

ここまで開くと種子は落果するのですが、果実の向きが良くなかったようです。

種子が1個のサザンカと3個のヤブツバキ、外皮が3裂するのは同じです。

しかし、種子を保持する構造は大きく異なります。ヤブツバキと比べてみてください。


クコ(Lycium chinense)

<ナス目・ナス科・クコ属>

2012/12/12         2012/12/26          2012/12/26 .

ナス科クコ属の落葉低木で、中国原産の帰化植物。

日本以外にも、台湾、朝鮮半島、北アメリカにも移入されて分布が広がっている。

枝は長さ1m以上、太さは数mm-1cmほどで、細くしなやかである。

地上部は束状で、上向きに多くの枝が伸びる。

枝には2-5cm程度の葉と1-2cm程度の棘が互生するが、枝分かれは少ない。

垂直方向以外に地上にも匍匐茎を伸ばし、同様の株を次々と作って繁茂する。

開花期は夏-初秋で、直径1cmほどの小さな薄紫色の花が咲く。

果実は長径1-1.5cmほどの楕円形で、赤く熟す。

一旦定着すると匍匐茎を伸ばして増え続け、数年後にはまとまった群落となることが多い。

果実は酒に漬けこんでクコ酒にする他、生食やドライフルーツでも利用される。

薬膳として粥の具にもされる。また、柔らかい若葉も食用にされる。

 

夏から晩秋にかけて土手などで花を咲かせていただクコですが、すっかり除草されてしまいました。

唯一、川縁にあったクコが残り、たくさんの果実を付けていました。


タマサンゴ(Solanum pseudocapsicum)

<ナス目・ナス科・ナス属>

ナス科ナス属の非耐寒性常緑小低木で、ブラジル原産の帰化植物。

別名、フユサンゴ(フエサンゴと誤記されている場合もある)、リュウノタマ。

観賞用に栽培されていたものが、逸出して野生化し、各地で見られるようになってきている。

見た目は草本に見えるが、樹木であり、樹高は30~100cmで、茎は直立してよく分枝する。

葉は密に互生し、有柄で葉身は長さ5~10cmの披針形で、先が尖り、全縁で縁が波打つ。

花期は5月~12月であるが、条件が良ければ通年で開花する。

花は葉と対生するよう出る散形花序に1~4個付き、花柄は長さ4~10mm。

花冠は直径12~15mmの白色で、5深裂して裂片は平開する。

萼は広鐘形で5深裂し、長さ3mm前後の裂片は披針形で先は尖る。

オシベ5個は花冠裂片と互生し、黄色い葯が花柱の周りに接してつく。

果実は直径15mm前後のやや縦長の球形の液果で、黄色~橙赤色に熟す。

なお、冬季にも赤く熟した果実が残り、赤い玉珊瑚に見えるのがタマサンゴやフユサンゴの名前の由来。

2013/1/17

昨年5月以降見てきたタマサンゴですが、まだ、雪の残る中、花を咲かせていました。

雪の重みで枝が1本折れていましたが、まだ、その枝に赤い実も残っていました。


ムラサキイヌホオズキ(Solanum memphiticum)

<ナス目・ナス科・ナス属>

ナス科ナス属の一年草で、南アメリカ原産の帰化植物。

日本では、関東以南、四国、九州から沖縄まで分布する。

草丈は30~60cmで、茎は紫色を帯び、基部でよく分枝して斜上し、あまり高くならない。

葉は互生し、葉身は長さ3~9cmの楕円形で、不規則な波状の切れ込みがある。

花期は7月~11月で、花冠は直径6~12mmで淡紫色を帯び、5裂する。

1個のメシベを囲むように5個のオシベが取り囲む。黄色い葯は長さ2㎜前後で、柱頭は葯より低い。

花後、柄が下垂して直径6~9㎜の果実(液果)を付ける。果実は光沢のある黒色に熟す。

よく似たものが多く、以下のように区別する。

●ムラサキイヌホオズキは、花が淡紫色を帯び、茎など全体に紫色を帯びる。

●イヌホオズキは、花は白色~淡紫色で基部まで切れ込まず幅広。果実に光沢がない。

 小花柄が少しづつずれて総状に付き、果実は球形、やや縦長になる。

●アメリカイヌホオズキは、花は淡紫色~白色で、果実は光沢があってほぼ球形。

●テリミノイヌホオズキは、花は白色~淡紫色で、果実の光沢が強く、トマトのような扁球形。

●オオイヌホオズキは、花は白色~淡紫色でやや大きく、花柱や葯が多種より長い。

2012/12/27

多摩川に行く途中の道端で見かけました。

最初に見たとき、ずいぶん暗い色のイヌホウズキだと思っていました。

写真に撮っても何となく全体が紫がかった色合いになってしまいます。

調べてみると、イヌホウズキによく似たムラサキイヌホウズキと分かりました。

コンクリートの継ぎ目のわずかな隙間に生えており、12月末のこの時期に花を咲かせ、結実していました。