ナス科・ヒルガオ科

ナス目

  ナス科(クコ、イヌホオズキ、タマサンゴ、トマト、ナス、ワルナスビ)

  ヒルガオ科(ヒルガオ、アイノコヒルガオ、コヒルガオ、マルバアサガオ、マルバルコウ)


クコ(Lycium chinense)

<ナス目・ナス科・クコ属>

ナス科クコ属の落葉低木で、中国原産の帰化植物。

日本以外にも、台湾、朝鮮半島、北アメリカにも移入されて分布が広がっている。

枝は長さ1m以上、太さは数mm-1cmほどで、細くしなやかである。

地上部は束状で、上向きに多くの枝が伸びる。

枝には2-5cm程度の葉と1-2cm程度の棘が互生するが、枝分かれは少ない。

垂直方向以外に地上にも匍匐茎を伸ばし、同様の株を次々と作って繁茂する。

開花期は夏-初秋で、直径1cmほどの小さな薄紫色の花が咲く。

果実は長径1-1.5cmほどの楕円形で、赤く熟す。

一旦定着すると匍匐茎を伸ばして増え続け、数年後にはまとまった群落となることが多い。

果実は酒に漬けこんでクコ酒にする他、生食やドライフルーツでも利用される。

薬膳として粥の具にもされる。また、柔らかい若葉も食用にされる。

2012/8/20

多摩川の土手で花を咲かせているクコを見かけました。

根元から束状に枝を出し、各枝はあまり枝分かれしないのが特徴です。

クコの果実は、果実酒(クコ酒)、生食、ドライフルーツとして利用され、薬膳にも使用されます。

また、果実、根皮、葉が、各々枸杞子(くこし)、地骨皮(じこっぴ)、枸杞葉(くこよう)として生薬に利用されます。

2012/12/12         2012/12/26              2012/12/26

多摩川の川縁でクコがきれいな実をたくさん付けていました。

土手などで見かけたクコは、除草されてしまいましたが、川縁は対象外のため結実したようです。


イヌホオズキ(Solanum nigrum)

<ナス目・ナス科・ナス属>

ナス科ナス属の一年草で、史前帰化植物とされている。

日本全土で見られ、世界の温帯から熱帯にかけて広く分布する。

草丈は10~100cmで、茎が細めでよく分枝し、横に広がりやすい。

葉は互生し、葉身は長さ6~10cmの卵形で、縁は全縁か波型の鋸歯がある。

花期は6月~11月で、葉腋ではなく茎の側面から花茎を出して2~5個の散形花序を付ける。

花茎は短く、小花茎が少しづつずれて付く(小花茎が1点に集まることはない)。

花冠の直径は6~12mmで、白色の5裂した花冠の裂片は細めである。

1個のメシベを囲むように5個のオシベが取り囲む。黄色い葯は長さ2㎜前後で、柱頭は葯より低い。

花後、柄が下垂して直径5~8㎜の果実(液果)を付ける。果実は光沢のない黒色に熟す。

よく似たものが多く、以下のように区別する。

●イヌホオズキは、花は白色~淡紫色で基部まで切れ込まず幅広。果実に光沢がない。

 小花柄が少しづつずれて総状に付き、果実は球形、やや縦長になる。

●アメリカイヌホオズキは、花は淡紫色~白色で、果実は光沢があってほぼ球形。

●テリミノイヌホオズキは、花は白色~淡紫色で、果実の光沢が強く、トマトのような扁球形。

●ムラサキイヌホオズキは、花が淡紫色を帯び、茎など全体に紫色を帯びる。

●オオイヌホオズキは、花は白色~淡紫色でやや大きく、花柱や葯が多種より長い。

2012/8/20

多摩川に行く途中の道端で、イヌホオズキが生えていることに気づきました。

当初、タマサンゴと思っていたものが、果実が黒くなっていたので気が付いたものです。

黒い果実につやがありませんのでイヌホオズキと判断しました。

黒い果実に光沢がある場合は、本種ではなく、アメリカイヌホオズキです。

よく見ると、果実の色以外に、花の大きさがかなり小さく、半分ほどの大きさです。

なお、イヌホオズキは、全草にソラニンを含むため、有毒です。 


タマサンゴ(Solanum pseudocapsicum)

<ナス目・ナス科・ナス属>

ナス科ナス属の非耐寒性常緑小低木で、ブラジル原産の帰化植物。

別名、フユサンゴ(フエサンゴと誤記されている場合もある)、リュウノタマ。

樹高は30~50cmで、茎は直立してよく分枝する。枝に星状毛が見られることがある。

葉は密に互生し、有柄で葉身は長さ5~10cmの披針形で、先が尖り、全縁で縁が波打つ。

花期は5月~12月であるが、条件が良ければ通年で開花する。

花は葉と対生するよう出る散形花序に1~4個付き、花柄は長さ4~10mm。

花冠は直径12~15mmの白色で、5深裂して裂片は平開する。

萼は広鐘形で5深裂し、長さ3mm前後の裂片は披針形で先は尖る。

オシベ5個は花冠裂片と互生し、黄色い葯が花柱の周りに接してつく。

果実は直径15mm前後のやや縦長の球形の液果で、黄色~橙赤色に熟す。

なお、冬季にも赤く熟した果実が残り、赤い玉珊瑚に見えるのがタマサンゴやフユサンゴの名前の由来。

 2012/5/29

多摩川に行く途中の道端で見かけました。草に見えますが、れっきとした常緑低小木です。

ナスの花を白くしたような直径1cmほどの花を付け、最初、緑色の実を付けます。 

2012/8/17

実が熟すに従い、黄色から赤へと変わり、晩秋から初冬まで見ることができます。

非耐寒性とはいえ、南関東以南では屋外で冬越しするようです。

最近は、野生化したものがあちこちで見られ、かなり大きくなったものも見られます。 

写真の大きな株は、幹線道路の路肩で街路樹の横に生えていたものです。

2013/1/17

昨年の5月に撮影したタマサンゴですが、まだ、雪の残る中、花を咲かせていました。

雪の重みで枝が1本折れていましたが、まだ、その枝に赤い実も残っていました。


トマト(Solanum pseudocapsicum)

<ナス目・ナス科・ナス属>

ナス科ナス属の1年草で、南アメリカ(アンデス山脈)原産の緑黄色野菜。

日本では、冬を越せずに枯れてしまうが、熱帯地方では長年にわたって実り続ける。

通常、草丈は1~2mほどに留めるが、通年栽培すると5~10mに成長して成り続ける。

以前、トマト属に分類されていたが、最近、系統解析によりナス属に戻すようになってきている。

花期は5月~8月で、直径20~30mmの黄花で、5~6深裂して平開から大きく反り返る。

オシベは合着して筒状になり、その中心にメシベが1本ある。

支柱誘引栽培品種では、本葉が8~9葉目に最初の花房が付く。その後は、3葉毎に花房を付ける。

地這栽培品種では、2葉毎に花房を付ける品種も多い。

2012/8/17

多摩川の川縁に、アレチウリに交じってトマトが花を付けていました。

なぜ、このような場所に生えているのかは分かりませんが、ここで世代を重ねてきたのかもしれません。

日本では、野草ではないのですが、頑張って花を咲かせていたので掲載しました。

2012/10/5

どんなトマトがなっているか見てきました。ミニトマトだったようです。

たくさん実を付けていましたが、足場が悪すぎて誰も取れません。

完熟して、実が落ちて、それが翌年に芽を出すのかもしれません。


ナス(Solanum melongena)

<ナス目・ナス科・ナス属>

ナス科ナス属の1年草で、インド東部が原産地ではと言われている野菜。

その後、ビルマを経由して中国、日本に伝わったとされ、日本での栽培歴も1000年以上になる。

中国や日本では広く栽培され、世界的にもいろいろな品種が各地で栽培されている。

日本では、冬を越せずに枯れてしまうが、熱帯地方では多年生植物。

一般に南方ほど、大きな果実になる傾向がある。

草丈は1~1.5mほどになり、葉は互生して、長さ15~25cmの長卵形で、長い葉柄がある。

花期は6月~10月で、直径20~40mmの淡紫色の花で、5~6浅裂して平開する。

オシベは5~6個あり、中心にメシベが1個ある。

2013/7/5

多摩川への途中の民家の庭先に植えられていたナスです。

もちろん野草ではなく、栽培されていたものですが、比較のために入れています。

ナス科ナス属の花

ナス科ナス属の花は、いろいろ特徴を持ってはいますが、基本的な構造には大差ありません。

最下段はナス科ナス属の野菜の花です。普段、良く食卓に並ぶ野菜だと思います。

ジャガイモもナス属なので、花はよく似ていますが、食べるのは地下茎であって、果実(有毒)ではないですね。

なお、他のナス属には全総有毒の品種もあるので、間違っても口にはしないでください。


ワルナスビ(Solanum carolinense) <ナス目・ナス科・ナス属>

<ナス目・ナス科・ナス属>

ナス科ナス属の多年草で、北アメリカ原産の帰化植物。

日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に広く分布している。

海外でも、アジア、ヨーロッパ、オセアニアと世界各地に帰化している。

本種は、種子だけではなく、地下茎でも繁殖し、さらにその切れ端からも再生するので、厄介な雑草。

草丈は50cm前後まで成長し、根茎を横に広げ群生する。茎には長くて鋭い刺がある。

葉は、長さ5~15㎝ほどで、縁に波状の切れ込みがあり、葉裏の中央脈にも鋭い刺がある。

花期は6月~10月で、花は直径3㎝ほどで、白色から淡紫色まで変化に富む。

果実は、球形で未成熟な時には縞模様があるが、黄色く熟すと縞は消える。

全草が有毒なソラニンを含んでおり、家畜などが食べると中毒を起こす。

2013/5/29

多摩川への途中にある幹線道路の中央分離帯に1株生えているのを見かけました。

タケニグサの隙間から顔を出して花を付けていました。花色は極淡い紫色でした。

2013/6/18

多摩川の土手で、ワルナスビが大きく育っていました。

昨年は全く見かけませんでしたので、除草のタイミングによって大きくなったものと思います。

このワルナスビも、花色は淡い紫色でしたが、上記のものよりはいくぶん濃いめでした。

2013/6/25

多摩川の土手下の通路脇でも、ワルナスビが成長を始めていました。

まだ小さな株ですので、今年、芽吹いたものと思われます。

花色は、白色に近いもので、一部に紫がかった所がありました。

2013/7/31

上記のワルナスビですが、一旦除草された後、再び、大きくなっていました。

やはり、簡単には除草できないようですね。地下茎ごと掘り起こさないと無理なようです。

なお、花色は純白になっていました。


ヒルガオ(Calystegia japonica)

<ナス目・ヒルガオ科・ヒルガオ亜科・ヒルガオ属>

ヒルガオ科ヒルガオ属のつる性の多年草で、在来種。

アサガオ同様に、朝開花するが昼になっても花がしぼまないのが和名の由来。

日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。

海外では、朝鮮半島から中国に分布する。

毎年、地上部は枯れ、春に蔓が伸び始めて、夏には大きく繁茂する。

葉は互生し、長さ5~10cmのほこ形~やじり形で、基部は斜め後方に張り出すが、裂けない。

花期は6月~8月で、葉腋から長い花柄を出し、淡紅色の花を1つ付ける。

花冠は、直径5~6cmの漏斗型で、ツボミの時は螺旋状に巻いている。

花柄の断面は円形で、翼はない。萼片5個を2個の苞が包んでいる。

方は長さ20~25mmの卵形で、鈍頭。オシベは5個で、基部に腺毛があり、葯は白色。

結実することは滅多になく、地下茎を伸ばして広がる。

2012/5/16

あちこちでヒルガオが花を咲かせ始めました。

ヒルガオは1種類かと思っていたのですが、調べてみると2種類ありました。

それで、写真をよく見ると、その2種類を写していることに気付きました。

一見、同じに見えますが、よく見ると違いがあるんですね。

この2種類以外に、海岸などの砂地に生えるハマヒルガオや帰化植物のセイヨウヒルガオというのがあるそうです。

2012/8/23

散歩コースの多摩川の土手にもヒルガオがたくさん咲いています。

土手に見られるのは、ほとんどがヒルガオです。

コヒルガオと異なり、一回り花が大きいことに加え、花柄にひだがなく、丸くてつるっとしています。

また、その葉の基部に張り出しがないか、あってもあまり目立ちません。


コヒルガオ(Calystegia hederacea)

<ナス目・ヒルガオ科・ヒルガオ亜科・ヒルガオ属>

ヒルガオ科・ヒルガオ属のつる性の多年草で、在来種。

ヒルガオ同様の形態で、ヒルガオよりいくぶん小型の花なのでこの名がある。

日本では、本州から四国、九州で見られる。

海外では、朝鮮半島から中国、台湾、モンゴル、ロシア、南アジアと東南アジアの一部などに分布する。

葉は互生し、葉先は鋭頭で基部が張り出したほこ形、張り出した耳の部分が2裂する事が多い。

花期は6月~10月で、葉腋から長さ数㎝の花柄を出し、小形のロート形の花を1個付ける。

花冠の直径は3~4cmで、五角状のことが多い。花色は淡紅色。

花柄の上部に狭い縮れた翼があるのが特徴で、同属との区別点である。

萼片は5個あるが、2個の苞が包んでいる。苞は長さ1~2cmの3角状卵形で、鋭頭。

オシベは5個で、葯の先は尖る。メシベは1個で、柱頭は2個。

なお、コヒルガオが結実する事は少なく、地下茎で広げがる。

2012/6/29

ヒルガオのつもりで撮った写真を後で調べて、コヒルガオと判明したものです。

違いの1つは葉の形で、コヒルガオでは葉の基部の両サイドが外に大きく張り出していることです。

ヒルガオでも両サイドに張り出しが見られるものがありますが、中央の葉の幅が異なります。

2012/8/17

よく観察してみると、河原までの道路脇などで見かけるのは、ほとんどがコヒルガオでした。

ヒルガオとの見分けのポイントは、花柄にひだがあることで、右端の写真(右下の花柄)で確認できます。


アイノコヒルガオ(Calystegia hederacea x C. pubescens)

<ナス目・ヒルガオ科・ヒルガオ亜科・ヒルガオ属>

ヒルガオとコヒルガオの交雑種で、葉や花柄などが両者の中間の形質を示す。

葉は互生し、ほこ形~矢じり形で、基部は横に張り出す。

花期は5月~8月で、花は葉腋に単生し、花柄は丸いか稜はあるが翼などはない。 

花冠は淡い紅色の五角形状漏斗形で、苞は大きく、三角状卵形である。

 

左端の写真ですが、コヒルガオのように葉の基部に張り出しがあります。

しかし、中央の葉の幅や張り出し具合は、コヒルガオとは異なります。

また、コヒルガオのように花柄にひだはありません。

上記の点からアイノコヒルガオと判断しました。


マルバアサガオ(Ipomoea purpurea)

<ナス目・ヒルガオ科・ヒルガオ亜科・Ipomoeeae連・サツマイモ属>

ヒルガオ科・サツマイモ属のつる性一年草で、熱帯アメリカ原産の帰化植物。

日本では、江戸時代に多くの変異が生まれ、極めて多くの変化を遂げた。

また、ソライロアサガオやマルバアサガオはまとめて「西洋朝顔」と呼ばれることもある。

つるは、普通、2~3mほど伸び、葉は互生して長さ10㎝前後の心形で、先が尖る。

なお、葉が3裂したものが、混じる場合がある。

長い花枝の先に花を数個付ける。花は直径7㎝前後で、色は濃青色(紅色~白色の品種もある)。

花色が薄い場合に目立つが、花弁の曜部が他の部分より濃い色になる。

萼は長さ15㎜ほどで細長く、萼裂片の先は尖る。果実は直径10㎜ほどの4分果。

※法政大学 アサガオ類画像データベース スライド No. 166が本種と思われます。

2012/10/26

多摩川の川縁近くで、以前からアサガオが咲いているのには気が付いていました。

たまたま、近くを通った際、見慣れない形のアサガオであることに気が付き、撮影したものです。

もう、10月も末ですが、まだ、真夏と同じようにたくさんの花を、真昼間にたくさん咲かせています。

花形や種子の付き方からマルバアサガオと判断しましたが、花弁が五裂しています。

そして、花弁の中心に紅を注したように色の濃い部分が見られます。


マルバルコウ(Ipomoea coccinea)

<ナス目・ヒルガオ科・ヒルガオ亜科・Ipomoeeae連・サツマイモ属>


ヒルガオ科・サツマイモ属のつる性一年草で、熱帯アメリカ原産の帰化植物。

日本では、本州中部以南、四国、九州で見られる。

また、日本も含めたアジア、南アメリカ、オセアニア、アフリカに移入分布する。

つるは左巻きで長くなると3mに達し、葉は互生する。長さ10㎝前後の卵形で先が尖り、基部は心形。

葉は全縁であるが、基部に数個の角状突起があり、長さ1~10㎝の葉柄がある。

花期は8月~10月で、葉腋から花柄を伸ばし、3~8個の朱赤色の花を上向きに付ける。

花冠は漏斗型で、長さ35mmほどの筒部の先は平開し、直径20㎜ほどの5角形になる。1日花。

オシベは5個で、メシベの柱頭は白い球状。オシベ、メシベとも、花冠からは突き出す。

萼は先が5裂して細く尖り、長さは3㎜前後。花後、花柄(果柄)は下向きとなる。

2012/8/20

多摩川に向かう道路脇の空き地に一輪、赤い小さな花が咲いているのに気が付きました。

近寄ってみると、マルバルコウでした。

周りで見かけたことがないので、どこから紛れてきたのか不思議です。

マルバルコウの群生

2012/10/21

国道16号線沿いの空き地でマルバルコウが群生しているところに出くわし、撮影したものです。

この一角には一面にマルバルコウが這い、たくさんの花を付けていました。

ルコウソウとマルバルコウ

ルコウソウは鮮烈な赤ですが、マルバルコウはオレンジ色がかった赤で、花芯は黄色です。

また、花の形状はルコウソウは星形で、マルバルコウは正五角形をしています。

葉の形は全く異なり、ルコウソウは羽状に深裂していますが、マルバルコウは全縁です。

               <ルコウソウ>2020/10/7

               <マルバルコウ2021/9/7