アヤメ科・キジカクシ科・ススキノキ科・ヒガンバナ科・ラン科

キジカクシ目

  アヤメ科(ヒメヒオウギズイセン)

  キジカクシ科(ジャノヒゲ、ヤブラン)

  ススキノキ科(ノカンゾウ、ヤブカンゾウ)

  ヒガンバナ科(アガパンサス、ハタケニラ、ニラ、アフリカハマユウ)

  ラン科(ネジバナ)


ヒメヒオウギズイセン(Crocosmia x crocosmiiflora)

キジカクシ目・アヤメ科・イキシア亜科・イキシア連・クロコスミア属

アヤメ科クロコスミア属の多年草で、アフリカ原産の種間交雑種。

南アフリカ原産の「檜扇水仙(ひおうぎずいせん」と「姫唐菖蒲(ひめとうしょうぶ)」をフランスで交配作出。

日本へは、明治時代の中期に渡来し、現在では各地で野生化している。

草丈は50~100cmで、球根は直径15~25mm。茎は2~4回分枝して上部で湾曲することが多い。

葉は、多くが根生して5~8枚つき、長さ30~80cmの披針形で茎葉よりかなり大きい。太い中央脈がある。

花期は6月~8月で、長い花茎を伸ばし、途中で分枝して多数の花をつける。

花序は穂状で、苞は長さ6~10mmで先は茶色。花は直径3cm前後で、橙赤色の花を2列につける。

花被片は、内外片ともに狭楕円形で各々3個あり、橙赤色で基部は黄色味を帯び、長さ16~25mm。

基部は合着して筒状になり、筒部は長さ12~15mm。

オシベは長さ15~22mmで、葯は6〜8mm。子房は楕円形で3室あり、直径3mm前後。

花柱はオシベより長く、先で3分枝して、花柱分枝は長さ4mmほど。その先端は2裂する。

蒴果は、長さ5~10mmの押しつぶされたような歪な球形で、凸凹のある3稜形。

2013/6/18

多摩川への道路脇の斜面で、ササや木々の間から花を咲かせている本種を見かけました。

長く伸ばした花茎の先に多くのツボミを付け、数輪が咲いていました。

2013/7/1                2013/7/9

近くの公園の一角に、ヒメヒオウギズイセンが植栽され、たくさん花を付けていました。

花の部分をアップで撮影しました。3裂したメシベの花柱が良く分かると思います。


ジャノヒゲ(Ophiopogon japonicus)

<キジカクシ目・キジカクシ科・スズラン亜科・ジャノヒゲ連・ジャノヒゲ属>

キジカクシ科ジャノヒゲ属の常緑多年草で、在来種。

日本では、北海道から本州、四国、九州と全国の林床に自生する。

日本以外でも、東アジアからフィリピンの森林に秘匿分布する。

草丈は10cm程しかなく、細い葉を多数出す。その葉の様子が竜の髭に似ているのが名前の由来。

その葉の間から花茎を出し、総状花序に淡紫色の花を下向きに付ける。

果実の果皮は薄く、成熟途中で敗れて種子がむき出しになり、秋に成熟して濃青紫色になる。

2013/7/2

多摩川へ行く途中の道路脇の斜面で、積もった落ち葉に交じって本種が花を付けていました。

まだ、ちょっと時期的に早いようで、花が開花しているのは数輪しかありませんでした。

下向きに咲いているので、無理やり上に向けて撮影したものです。

花被片は6個のはずですが、この花には7個見えます。


ヤブラン(Liriope muscari)

<キジカクシ目・キジカクシ科・スズラン亜科・ジャノヒゲ連・ヤブラン属>

キジカクシ科ヤブラン属の多年草で、在来種。

日本では、本州の関東以西から四国、九州の温暖な地域に分布する。

海外では、中国など東アジアに分布する。

草丈は30~60cmほどで、葉は幅1cm強、長さは50cm以上になる。

葉に斑入りのものがあり、観賞用に庭に植えらる。

花期は8~10月で、長さ50cm以上の花茎を伸ばし、先に総状花序を出す。

花は数個が束生し、6個の花被片は淡紫色で、稀に白花もある。

花被片は長さ数㎜の長楕円形で、オシベは6本、中央の花柱は2㎜ほどで、柱頭は小さい。

果実は早い段階で破れ、若い緑色の種子が露出して成長する。

種子の直径は6㎜ほどの球形で、熟すと黒紫色になる。

2013/7/25

今年の2月に見かけたヤブランが花茎を伸ばし、花を咲かせ始めました。

まだ、ちらほらですが、淡い紫の6弁の花がかわいらしいです。

2013/9/24

こちらは、斑入りの園芸品種ですが、花色も濃く、花数も多いので見ごたえはあります。

野生種に近いものと園芸品種の違いなのでしょうか。趣がかなり異なります。


ノカンゾウ(Hemerocallis fulva var. longituba)

<キジカクシ目・ススキノキ科・キスゲ亜科・ワスレグサ属>

ススキノキ科ワスレグサ属の多年草で、在来種。

日本では、本州から四国、九州の原野に群生する。

海外では、朝鮮半島から中国、サハリンに分布する。

ヤブカンゾウより一回り小さく、葉幅は半分程度、花茎は70~90cmになる。

花期は7月~8月で、花の直径は7cm、花筒は4cmほど。ヤブカンゾウより細長く見える。

花色は、朱色で、花弁の中央に黄白色の筋が入る。1日花で、朝咲いて、夕方にはしぼむ。

花が咲くまでは、ヤブカンゾウと酷似しているので、区別が付かない。

なお、若葉は食用にされる。

2014/6/20

今年も、土手の斜面にはヤブカンゾウ咲き始めていますが、河川敷でノカンゾウを見かけました。

今まで、何度も近くを通っているのですが、ノカンゾウとは気が付いていませんでした。

たまたま、近くを通った時に、ちょうど花が満開状態だったので気付いたしだいです。


ヤブカンゾウ(Hemerocallis fulva var. kwanso)

<キジカクシ目・ススキノキ科・キスゲ亜科・ワスレグサ属>

2012/6/25          2013/6/24   .

ススキノキ科ワスレグサ属の多年草で、中国原産の帰化植物。

日本では、本州以南の野原や藪で見られる。

なお、別名のワスレグサで呼ばれることもある(ワスレナグサではない)。

葉は、長さ50cm前後の広線形で、花茎は1mほどになり、先に数個の花を付ける。

花期は7月~8月で、花色は朱色に赤が混じる。

オシベとメシベの全部または一部が花びらのようになるので、八重咲きになる。

本種は、三倍体のため結実しないので、匍匐茎(ほふくけい)を周りに伸ばして増える。

 

2012/6/25 この日、刈り取られた土手の斜面に立ち上がっているヤブカンゾウのツボミを確認しました。

多摩川の散歩コースでは、土手の斜面にちらほらと見られます。

ただ、まだ蕾ばかりで咲いているものは見かけませんでした。

2013/6/24 今年も除草後の土手で、ヤブカンゾウの花茎がニョキニョキと立ち上がっていました。

開花が近いツボミはありましたが、開花しているものはありませんでした。

2012/7/5

ツボミも大きくなり、既に花を咲かせている株も見られました。

河原で咲く花の中では飛びぬけて大きいのと、花色が目立つので、遠くからでも咲いているのが分かります。

それにしても、オシベが花びらになるので、ゴチャゴチャとした花です。


アガパンサス(Agapanthus)

<キジカクシ目・ヒガンバナ科・アガパンサス亜科・アガパンサス属>

ヒガンバナ科アガパンサス属の多年草で、南アフリカ原産の園芸植物。

南アフリカでは20種程が知られるが、園芸品種は数百種類はあるようである。

冬でも葉が枯れない常緑種と、枯れてしまう落葉種、その中間種がある。

通常、アガパンサスというとムラサキクンシラン(Agapanthus africanus)を指すことが多い。

南アフリカが原産地で、花期が6月~7月の半耐寒性の多年草である。

草丈は30~40cmで、花茎は100~120cmになる。

地際から光沢のある長さ20~50cmの線形の葉を多数出し、その間から花茎を立ち上げる。

花茎の先の散形花序に、数十個の花を放射状に咲かせるが、最初はネギ坊主のような形をしている。

その薄い膜状の総苞が破れて、中から花が伸び出し、直径25~50mmの漏斗型の花を咲かせる。

花冠は6深裂し、あまり大きくは開かない。花色には青、紫、白がある。

オシベは6個で、葯は背着し、縦の隙間から裂開する。子房上位で、花柱の先の柱頭は頭状。

オシベ、メシベとも先がカールして上を向き、花冠と同じか、多少出る程度である。

2012/7/3

野草ではありませんが、多摩川の河原に忘れられたようにポツンと咲いていました。

放任栽培が可能なようなので、以前、誰かに植えられたのか、捨てられて着生したのかだと思われます。

2014/6/17              2014/6/17             2014/6/25

今年も、アガパンサスが花茎を伸ばし、たくさんのツボミを付けていました。

ツボミを包んでいた苞(左端の写真でツボミの根元に付いている茶色いもの)が破け、開花までの変化です。

2014/6/27              2014/6/27            2014/7/31

6/27 アガパンサスの花をアップで撮影したものですが、紫のグラデーションがきれいですね。

7/31 アガパンサスの花が終わり、結実した姿です。


ハタケニラ(Nothoscordum gracile)

<キジカクシ目・ヒガンバナ科・ネギ亜科・ギリエシア連・ハタケニラ属>

ヒガンバナ科ハタケニラ属の常緑多年草で、北アメリカ原産の帰化植物。

日本では、関東以西で、東海、紀伊半島、兵庫、徳島など一部の地域に分布している。

海外では、アフリカやオーストラリアにも帰化している。

葉だけの場合、ニラに似ているがニラ臭がないので、匂いを嗅げばニラとの区別は容易である。

有毒であるとの記述は見られないが、食べない方が無難だと思われる。

草丈は30~60cmで、地下に直径15mm前後の球茎があり、その周囲に小さな鱗茎を多数つけて増殖する。

葉は長さ15~40cmの線形で、淡緑色で光沢はなく、基部から5個前後出る。

花期は5月~6月で、長さ20~60cmの花茎を出し、頂部に膜質の2苞葉に包まれた散形花序を付ける。

花序には、白色で直径15mm前後の花を7~20個付ける。

花被片は6個で半開し、長さ10mmほどの花被片の外側には淡紅色の脈が入り、芳香がある。

オシベは6個あり,花糸に翼があって扁平で、基部は合着する。子房には3条の溝がある。

※ 種子と地下茎にできる鱗茎で繁殖し、特に鱗茎による繁殖力が強力で、駆除が難しい雑草の1つである。

2012/5/24

多摩川に行く途中の道端や神社の参道で見かけました。

ニラのような葉ではあるが、花が異なるため、はじめは名前が分からず、未分類でした。

別の調べ物をしていて、偶然、名前がわかったのですが、ニラとは属が異なります。


ニラ(Allium tuberosum Rottl.)

<キジカクシ目・ヒガンバナ科・ネギ亜科・ネギ連・ネギ属>

ヒガンバナ科ネギ属の多年草の緑黄色野菜で、中国北部からモンゴル・シベリアが原産の帰化植物。

原種は「Allium ramosum」とされ、3000年前以上前から栽培化されていたと考えられている。

日本へは弥生時代に渡来し、古くから栽培、野生化して、本州から四国、はな九州に分布している。

全草に独特の匂いがあり、その原因物質は硫化アリル(アリシン)などの硫黄化合物である。

葉は、長さ20~30cmの平たい線形で、株状になった短い鱗茎から葉が多数立ち上がる。

花期は8月~10月で、長さ30~40cmの花茎を真っすぐに立ち上げ、先に半球形の散形花序を付ける。

花は直径12mm前後の白い小花で、先の尖った狭長楕円形の外花被片と内花被片が各々3個があり、

外花被片がやや細身で小さいが、見た目は6弁花に見える。

オシベは6個で、花糸は下部が太くなっている。子房は3室になっている。

子房は熟すると割れて黒色の小さな種を散布する。

※ 毎年のようにスイセンとの誤食事故が新聞等で見受けられます。

花を見れば間違うことはないのでしょうが、葉のみの場合は非常に似ています。

両者が混生している場合もあるので、そのような場所では細心の注意が必要となります。

鱗茎の直径や葉の幅は、一般にスイセンはニラの倍くらいありますが、絶対ではありません。

一番の違いは臭いで、葉をつぶしたときのニラ特有の臭いはスイセンにはありません。

また、根本に丸い球根(鱗茎)があればスイセンであり、明瞭な鱗茎がなくて髭根が出ていればニラです。

2012/9/3

多摩川の河原では、草むらで他の野草に交じって生えています。

ニラの花は、花弁は3枚ですが、白い苞が3枚あるので、花弁が6枚あるように見えます。

オシベは6個、子房は3室になっています。

2012/9/11

一ヶ所、ニラが固まって花を咲かせているところがありました。

これだけ集まって咲いているとちょっと見ごたえがあります。


アフリカハマユウ(Crinum bulbispermum)

<キジカクシ目・ヒガンバナ科・ヒガンバナ亜科・ホンアマリリス連・ハマオモト亜連・ハマオモト属

ヒガンバナ科ハマオモト属(ハマユウ属)の常緑多年草で、南アフリカ原産の園芸植物。

日本には明治時代初めに渡来し、インドハマユウとされていたが、最近になり本種と判明した。

草丈は45~75cmで、鱗茎は長さ8~10cm、幅6~8cmと大きい。

葉は長さ50~80cmで、幅が10cm前後あり、濃緑色で光沢がある。

花期は6月~7月で、葉の間から長さ50~60cmの花茎を伸ばして散形花序を付ける。

漏斗形のユリのような花で、花柄が長さ4~6cmと長い(インドハマユウは無柄か極短い)。

筒部は長さ5~10cmで細く、花被片は長さ6~11cmある。

花色は、原種では花被片に赤い筋が入ったものが多いが、日本では白花のものが多い。

夏の夕方に漏斗状の白花を多数咲かせ、夜中に満開になる虫媒花で、芳香がある。

2014/6/16

野草ではありませんが、多摩川の河原に忘れられたように大きな株があります。

毎年、白い花を咲かせており、ハマユウの仲間だと思っていましが、それ以上は調べていませんでした。

今年、気になって調べたところ、本種と分かりました。

ハマユウの花と比較すると、テッポウユリの花に近い形状と花色です。

原種では花被片に赤い筋が入るそうですが、これは日本国内では多い白花品種のようです。


ネジバナ(Spiranthes sinensis var. amoena)

<キジカクシ目・ラン科・ネジバナ亜科・クラニチス連・ネジバナ属>


ラン科ネジバナ属の多年草で、日本の全土に分布する。別名としてモジズリの名がある。

分布域はヨーロッパ東部からシベリア、温帯・熱帯のアジア全域、オセアニアと極めて広い。

ラン科の植物としては、珍しく身近に見られる。

湿っていて日当たりの良い、背の低い草地に良く生育する。

花茎は10~40cmになり、根際に数枚の葉を付ける。

葉は柔らかくて厚みがあり、冬季は楕円形をしているが、生育期間中には細長く伸びる。

花色は通常淡紅紫色(稀に白花)で、小さな花を多数細長い花茎に密着させるように付ける。

その花が花茎の周りに螺旋状に並んで咲く「ねじれた花序」が和名の由来である。

右巻きと左巻きの両方があり、中には花序がねじれない個体や、途中でねじれ方が変わる個体もある。

なお、右巻きと左巻きの比率は、ほど同率である。

2012/6/19

河原の草むらを歩いていて、ネジバナが咲いているのに気がつきました。

小さくてもラン科の植物なので、よく見るとカトレアのような形をしています。

2012/6/29

ネジバナもあちこちで見られるようになりました。

庭先の芝生に生えているところもあります。

河原の方も、結構あちこちで見られるようになりました。

よく見ると、右巻きと左巻きがありますが、発生比率は五分五分だそうです。

2013/6/18

今年もネジバナがあちらこちらで咲いていました。

今年は少し拡大率を上げて撮影してみました。ラン科の花の特徴がよく分かると思います。