ハバチ科・ミフシハバチ科

ハチ目・ハバチ亜目

 ハバチ上科ハバチ科(オスグロハバチ、カブラハバチ、セグロカブラハバチ、

           ニホンカブラハバチ、ハグロハバチ)

 ハバチ上科ミフシハバチ科(アカスジチュウレンジ、ルリチュウレンジ)


オスグロハバチ(Dolerus (Dolerus) japonicus

<ハチ目・ハバチ亜目・ハバチ上科・ハバチ科・シダハバチ亜科・スギナハバチ属>

ハバチ科スギナハバチ属の葉バチで、在来種。

ハチ亜目に属するハチ類より原始的なハチ類と考えられている。

日本では、北海道から本州、四国、九州に分布する。

海外では、朝鮮半島から中国に分布する。

出現時期は4月~6月で、体長は8~10mmである。

オスは全体が真っ黒で、メスでは胸部が赤褐色になり、小楯板と胸部中央付近が黒色。

幼虫の食草は、スギナである。

2013/5/16

多摩川の土手を散歩中、通路脇で真っ黒なはバチらしきものを見つけました。

いろいろと調べた結果、オスグロハバチのオスとしました。

2013/5/22

多摩川の土手を散歩していて、見つけたものです。

当初、胸部背面や脚の色からニホンカブラハバチではないかと思っていました。

しかし、触角がニホンカブラハバチより細長く、さらに調べていてオスグロハバチのメスと分かりました。

個体が止まっていたのは幼虫の食草であるスギナであり、間違いはないと思われます。


カブラハバチ(Athalia rosae ruficornis)

<ハチ目・ハバチ亜目・ハバチ上科・ハバチ科・ハグロハバチ亜科・カブラハバチ属>

ハバチ科カブラハバチ属のハバチで、在来種。

ハチ亜目に属するハチ類より原始的なハチ類と考えられている。

日本では、北海道から本州、四国、九州、南西諸島と全国に分布する。

海外では、朝鮮半島から中国、シベリア、ヨーロッパと広く分布している。

出現時期は、5月~6月と10月~11月で、年5~6回の発生。

夏は土中の繭の中で前蛹体で過ごし、冬も土中の繭の中で前蛹体で越冬する。

体長は7~8mmで、頭部と後胸背板の翅の付根付近が黒色で、小楯板やその他は橙黄色である。

翅は暗色を帯び,基部は濃くなる。本種の脛節と各跗節は末端のみ黒色である。

幼虫は体長15~18mmの黒いビロード状のイモムシで、ナノクロムシと呼ばれる。

幼虫の食草はアブラナ科の植物で、ダイコン、カブなどを加害する農林害虫である。

2014/4/22

セイヨウジュウニヒトエの周りを飛び回っていたハバチの中の1種が、本種でした。

撮影後の確認で、前胸背の翅の付け根あたりの黒斑、脛節の末端のみが黒い点で、本種としました。

ただ、正直なところ、飛翔中はもちろん、止まっているときも、ニホンカブラハバチとの判別は困難です。


セグロカブラハバチ(Athalia infumata)

<ハチ目・ハバチ亜目・ハバチ上科・ハバチ科・ハグロハバチ亜科・カブラハバチ属>

ハバチ科カブラハバチ属のハバチで、在来種。

日本では北海道から本州、四国、九州に分布する。

ハチ亜目に属するハチ類より原始的なハチ類と考えられている。

出現時期は4月~10月で年6回以上発生。体長はオスで5~6mm、メスで6~8mmである。

頭部と中後胸背板と第1腹背節が黒色で、胸部側面やその他の腹部は橙黄色である。

脚の脛節や跗節は全体が黒くなっている。

幼虫はカブラハバチの黒い幼虫とそっくりで、ダイコン、カブなどアブラナ科の植物を加害する。

2013/4/26

セイヨウジュウニヒトエを撮影中、どこからともなく飛んできて、葉の上に止まりました。

あちらこちらで見かけるのですが、名前までは調べたことがありませんでした。

写真からセグロカブラハバチと分かりましたが、弱弱しい感じで、ハチの仲間とは思ってもいませんでした。

ハチと言っても、ハチ亜目のハチ類とは異なり、毒針を持たず、人を刺すことはありません。

なお、セグロカブラハバチは、名前から分かる通り、カブラなどのアブラナ科の葉を食害します。

食害するのは、幼虫で、イモムシ状で「菜の黒虫(なのくろむし)」と呼ばれています。

なお、よく似たカブラハバチやニホンカブラハバチがいますが、このとき見たのは本種のみでした。

 

2014/4/24               2014/4/24                2014/4/28

4/24 昨年見かけた同じ場所で、今年は10匹程が飛び回っていました。

撮影時には、気が付きませんでしたが、後でよく見ると、3種類のカブラハバチが混じっていたようです。

昨年とは違い、接写用のレンズセットでしたので、かなりアップで撮影できました。

胸部背面の黒い部分が良く分かると思います。

4/28 まだ、多くのハバチが飛び回っており、交尾しているものもいました。

その中で、本種は他種よりも少なめで、この日見たのはこの1匹だけでした。


ニホンカブラハバチ(Athalia japonica

<ハチ目・ハバチ亜目・ハバチ上科・ハバチ科・ハグロハバチ亜科・カブラハバチ属>

ハバチ科カブラハバチ属のハバチで、在来種。

日本では、北海道から本州、四国、九州、南西諸島と全国に分布する。

海外では、朝鮮半島から中国、台湾、樺太に分布する。

ハチ亜目に属するハチ類より原始的なハチ類と考えられている。

出現時期は5月~11月で、春と秋の2回発生する。

夏は土中の繭の中で幼虫態で過ごし、冬も同様の幼虫態で越冬する。

体長は7~11mmで、前胸背は橙赤色で、後胸背板の後方から腹部第1節の背面が黒色になる。

その他の腹部は橙黄色で、翅は暗色である。腿節の先端から脛節、跗節全体が黒くなる。

幼虫の食草はアブラナ科の植物で、ダイコン、カブなどを加害する農林害虫である。

2014/4/24

セイヨウジュウニヒトエの周りを飛び回っていたハバチの中の1種が、本種でした。

撮影後の確認で、前胸背全体が橙色であること、脛節全体が黒い点で、本種としました。

なお、左端の個体は少し小型で、翅の色も透明に近いほど淡く、腹部第1節が黒いのが見えます。

下記の4/28の写真から、おそらくオスの個体と思われ、他の2枚はメスの個体と思われます。

2014/4/28

飛び回っている中で、一回り大きな個体を追っていると近くの葉に止まりました。

ただ、ちょっと遠目で、どうやって撮ろうかと考えていると、小さめの個体が飛んできました。

そして、あっという間に交尾の体制に入ったのです。それが、左端の写真です。

オスが、翅を半開きにしてぶら下がった状態で交尾していました。腹部第1節の背面が黒いのが分かります。

撮りにくい場所で、四苦八苦しながら撮ったのですが、ものの1分もしないうちにオスは飛び去りました。

しばらく、メスはその場所にいたのですが、ヒラドツツジの方に移動し、その後どこかに飛び去りました。 

2015/5/20

いつもの多摩川への散歩道の途中、道端のハマダイコンの葉に付いている黒いイモムシを見つけました。

そう、菜の黒虫です。その名の通り、真っ黒で、いぼ状の突起が見られます。

その特徴から、ニホンカブラハバチの幼虫と判断しました。

カブラハバチ・ニホンカブラハバチ・セグロカブラハバチ

  <カブラハバチ>    <ニホンカブラハバチ>    <セグロカブラハバチ>

よく似たカブラハバチ属のセグロカブラハバチ、カブラハバチ、ニホンカブラハバチです。

パッと見の違いは、胸部背面の黒い部分の有無や大きさの違いです。

ニホンカブラハバチには黒い部分はありませんが、カブラハバチは翅の付根の部分に黒斑があります。

セグロカブラハバチは、胸部背面全体が黒いです。

もう1つの違いは脚の黒い部分で、カブラハバチは脛節と各跗節の末端のみ黒色になります。

ニホンカブラハバチとセグロカブラハバチは、脚の脛節や跗節は全体が黒い点です。

ニホンカブラハバチは、黒い部分が腿節の先端にまで及びます。

 

この3種は、幼虫生態も良く似ています。

アブラナ科の植物(アブラナ、カブ、ダイコンなど)の葉の組織内に1粒づつ産卵します。

孵化した幼虫は、2齢末期まで表皮を残して、内部の葉肉部分のみを食害します。

2齢末期になると表皮に穴が開くほど食害するようになり、3齢以後は葉脈のみ残して葉肉を食べます。

そのため、これらの幼虫(ナノクロムシ)に食害された葉は、きれいな網目状になります。

これら3種の幼虫は、その名が示す通りの黒いイモムシで、外見も良く似ています。

よく見れば、カブラハバチはツルっとしているのに、ニホンカブラハバチには、いぼ状の突起があります。

セグロカブラハバチは、黒というよりは少し灰色っぽい色で、いぼ状の突起はありません。


ハグロハバチ(Allantus luctifer luctifer

<ハチ目・ハバチ亜目・ハバチ上科・ハバチ科・ハグロハバチ亜科・カブラハバチ属>

ハバチ科カブラハバチ属のハバチで、在来種。

日本では、北海道から本州、四国、九州、南西諸島と、ほぼ全国で見られる。

ハチ亜目に属するハチ類より原始的なハチ類と考えられている。

出現時期は5月~11月で年に4~5化。体長は7~10mmである。

全身が黒色で、メスのみ第1腹背板両端、第3、第4背板両後縁に淡青色の紋がある。

翅は黒色で、前翅の前縁にある縁紋も基部が淡青色である。

幼虫の食草は、ギシギシやスイバなどのタデ科の植物で、体側に黒斑が一列に並ぶイモムシである。

2014/6/3

多摩川への道路脇の街路樹の下で、葉に止まっている本種に気が付きました。

近づいても逃げなかったので、葉をそっと待ちあげて、横から模様が見えるように撮影しました。

拡大写真は、その模様の部分で、脚の一部や前翅の中程にも淡青色の模様があります。

この特徴から、このハグロハバチの個体はメスということになります。


アカスジチュウレンジ(Arge nigronodosa)

<ハチ目・ハバチ亜目・ハバチ上科・ミフシハバチ科・ミフシハバチ亜科・チュウレンジハバチ属>

日本では北海道から本州、四国、九州とほぼ全国で見られる。

海外では、中国から、サハリン、シベリアに分布する。

体長は10mmほどで、頭部と脚は黒、翅は半透明で黒く、胸部と腹部は明るい橙色。

胸部背面には、黒いこぶが3つと橙色のこぶが1つある。

触角は、3節からなり、第1節と第2節は短くて、第3節が長い。これが科名の由来になっている。

幼虫はイモムシで、その食草はバラ科の葉。集団で食害するので、バラ愛好家には嫌われている。

2013/9/9

河川敷のイタドリの花で、ハバチと思われる腹部の橙色が目立つハチを見かけました。

後で調べて、胸部背面の特徴からアカスジチュウレンジと判定しました。


ルリチュウレンジ(Arge similis)

<ハチ目・ハバチ亜目・ハバチ上科・ミフシハバチ科・ミフシハバチ亜科・チュウレンジハバチ属>

日本では北海道から本州、四国、九州とほぼ全国で見られる。

海外では、朝鮮半島から中国、台湾に分布する。

体長は10mmほどで、全体に黒色で、るり色の金属光沢がある。

翅は半透明で、触角は、3節からなり、第1節と第2節は短くて第3節が長いが、これが科名の由来。

幼虫はイモムシで、その食草はツツジ科の葉。集団で食害するので、放っておくと丸坊主にされる。

幼虫の齢数は、メスでは5~6齢、オスでは4~5齢である。

胸腹部は黄緑色から灰緑色で、尾端背面は黒色。刺毛のある小黒斑が多数ある。

頭部は黒色であるが、終齢幼虫になると黄橙色になる。腹脚は6対で、第2~6節と10節(尾端)にある。

若齢時は集団行動を取るが、成長するにつれて分散し、老熟すると地下で繭を作る。なお、越冬は蛹。

2014/7/10

多摩川からの帰り道、ルリチュウレンジが目の前を横切って、歩道に止まりました。

あわててカメラを出し、思わず、人目も気にせずに写真を撮ってしまいました。

名前に違わず、全身にるり色の光沢をまとったきれいな昆虫です。

中央は、科名の由来である触角を拡大したものですが、太く反り返った第3節が触角の大半を占めます。

ルリチュウレンジの幼虫

      2018/5/28 <中齢幼虫>        2018/5/28 <終齢幼虫>

実家のツツジを食い荒らしていたルリチュウレンジの幼虫です。かなりの被害にあいました。

卵は葉の縁に埋め込むように産卵され、孵化すると葉の縁から食べ始めます。

1齢幼虫は固まっていますが、大きくなるにつれて分散してしまいます。

中齢幼虫までは、頭部が黒く、体色も緑っぽい色をしています。

それが終齢幼虫になると、頭部はオレンジ色になり、体色もオレンジがかった色に変わります。

中齢幼虫までは頭部が黒いので眼がどこか分かりませんが、終齢幼虫では黒い眼が良く分かります。

なお、この段階になった幼虫の食欲は、すさまじいものがあります。