スミレ科・アケビ科・キンポウゲ科・ケシ科

キントラノオ目

  スミレ科(アメリカスミレサイシン、アリアケスミレ、スミレ、タチツボスミレ、ノジスミレ、ヒメスミレ)

キンポウゲ目

  アケビ科(アケビ、ムベ)

  キンポウゲ科(セイヨウオダマキ、キツネノボタン、ヒメウズ)

  ケシ科(クサノオウ、ナガミヒナゲシ、キケマン、ムラサキケマン)

 


アメリカスミレサイシン(Viola sororia)

<キントラノオ目・スミレ科・スミレ属>

スミレ科スミレ属の多年草で、アメリカ原産の帰化植物。無茎種。

園芸品種が雑草化した非常に強健なスミレで、湿り気のある林内や草地、道ばたなどで見かける。

国内の分布域は明確ではないが、かなり広範囲に逸脱している。

花色により数種類あり、本種は「パピリオナケア」と呼ばれる品種。

他に白地に紫の筋が入る「プリケアナ」、純白の「スノープリンセス」、

白地に紫の斑点が入る「フレックス」などがある。

花は、直径3cmほどになり大きめ。側弁には毛が密集している。

葉は、心形でいくぶん厚みがあり、若い葉の基部は巻き込む。

 

2012/4/20

最初、散々調べたけれど、特徴がどのスミレとも合わないため種類が分からず、困惑しました。

ひょんなことからアメリカスミレサイシンと分かりましたが、逃げ出した園芸品種とは気づきませんでした。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<パピリオナケア>       <スノープリンセス>

純白のスノープリンセスは、秩父 羊山公園で見かけたものですが、実家の庭にも咲いていました。

絞り模様のプリケアナは、まだ、見たことはありません。


アリアケスミレ(Viola betonicfolia var. albescens)

<キントラノオ目・スミレ科・スミレ属>

スミレ科スミレ属の多年草で、在来種。

日本では、本州から四国、九州に分布する。

海外では、朝鮮半島から中国東北部、東南アジア南東部、オーストラリアにまで分布する。

草丈は7~11cmで、道端などでときどき見かける無茎種。

葉は長さ2~7cmの細長い三角形の披針形で、先端は丸くなる。葉柄の上部には狭い翼がある。

花期は4月~5月で、直径2cm前後の花を付け、距は花色と同じく白色で、太短い。

側弁の基部に毛が多く、上弁の基部にまで毛があるものもある。

スミレと良く似ているが、花色が変異は多いが白色が基調となる点で区別できる。

花色は、白地に少し筋が入るものから、紫の筋の目立つもの、地色に紫を帯びるものまで多彩。

 

2014/4/7

多摩川への道路脇で、コンクリートの隙間で花を咲かせていました。

隙間に沿って、数株のアリアケスミレが並んで花を付けていました。

2015/4/17

昨年の写真では、側弁に生える突起毛を確認できる写真がなかったので、撮り直したものです。

中央の写真では、側弁にびっしりと突起毛が生えているのが分かると思います。


スミレ(Viola mandshurica)

<キントラノオ目・スミレ科・スミレ属>

スミレ科スミレ属の多年草で、道端などでよく見かける無茎種。

日本では、北海道から本州、四国、九州と全国でふつうに見られる。

海外でも、朝鮮半島から中国、ウスリーまで分布する。

葉は、根元から多数出し、細長い矢じり型で、葉柄には翼があるのが特徴。

花色は、普通は濃紫色だが、白花のものもある。

5枚の花弁の内、唇弁の1枚が大きく、2枚の側弁には白い突起毛がある。

果実は長さ1㎝ほどの蒴果で、熟すと上向きになり、3裂する。

 

2013/3/14

昨年は、花期に見つけられなかったスミレですが、今年は見つけました。

多摩川への道路脇のコンクリートの隙間に根を張り、花を咲かせていました。

2013/3/29

多摩川への道路脇の民家の塀に張り付くように咲いていたスミレです。

昨年は、見つからなかったスミレですが、今年は、あちらこちらで見かけます。

昨年は、どこを見ていたんでしょうね。不思議です?

2014/4/14

スミレの特徴的な部分を並べてみました。

葉は、細長く丸みのある披針形で、葉柄には翼があります。

花色は、濃紫色で、距は細長く、側弁には毛が生えています。


タチツボスミレ(Viola grypoceras)

<キントラノオ目・スミレ科・スミレ属>

スミレ科スミレ属の多年草で、道端などでよく見かける有茎種。

日本では、北海道から本州、四国、九州と全国の野原から低山地、亜高山帯まで分布する。

海外では、朝鮮半島から中国南部まで広く分布する。

花色は淡紫色が多いが、変異は多い。側弁は無毛。

スミレやヒメスミレと異なり、成長すると茎が伸び、茎の途中にも葉が付く。

葉は心形で、托葉は櫛の歯状に深裂する。

 

2012/4/20 こちらもよく見かけるスミレですが、色がうす紫で淡い色合いがきれいです。

茎が伸びあがるので、他のスミレと比較すると背の高い株になります。

2012/5/24 花後、蒴果(さくか)ができていました。まだ、未成熟で若々しい色をしています。

2012/6/29

蒴果(さくか)が成熟し、縦に割れて種子が飛び散った後です。

上右の写真には、成熟して割れる直前の蒴果、まだ色の残る割れた蒴果、茶色くなった蒴果が見られます。

2013/3/21             2015/4/1            2015/4/1

2013/3/21 多摩川への道路脇にある神社の境内で、タチツボスミレが花を咲かせていました。

この境内には、ヒメスミレとタチツボスミレが混生しています。

2015/4/1 今年も境内にたくさんのタチツボスミレとヒメスミレが花をさかせていました。

形の整ったタチツボスミレの花の写真がなかったので、追加しました。


ノジスミレ(Viola yedoensis)

<キントラノオ目・スミレ科・スミレ属>

スミレ科スミレ属の多年草。人里周辺でよく見かける無茎種。

日本では、本州の秋田県以南から四国、九州の低地に分布する。

海外では朝鮮半島から中国、台湾、モンゴル、インドからフィリピンにかけて分布する。

草丈は5~10cmで、葉は長さ3~6cmの長三角形からへら形で、葉柄には翼がない。

花後に葉幅が広がり、三角形~卵形になる。葉や茎には白い短毛が生え、白っぽく見える。

花期は3月~4月で、花色は青味の強い濃紫色。側弁は無毛で、距は濃紫色で細長い。

 

2014/4/7

よく見かけるスミレの1つですが、多摩川への道路脇で見かけました。

2014/4/14

ノジスミレの特徴的な部分を並べてみました。

葉は、長三角形からへら形で、葉柄には翼はありません。

花色は、青味の強濃紫色で、距は細長く花色と同色、側弁に毛は生えていません。


ヒメスミレ(Viola inconspicua subsp. nagasakiensis)

<キントラノオ目・スミレ科・スミレ属>

スミレ科スミレ属の多年草で、道端などでよく見かける無茎種。

日本では、本州から四国、九州に分布する。海外では台湾に分布する。

草丈は5~10cmで、根は白色。

花期の葉は長さ2~4cmの三角状披針形で基部は心形、翼がない長い葉柄がある。

普通、葉の裏は紫色を帯び、鋸歯は基部が細かい。花後、葉は三角形に近くなる。

花期は3月~4月で、直径10~15mmの濃紫色の花を付ける。

スミレより一回り小型で、花弁は細いものが多く、側弁の基部には白毛がある。

距は緑白色に赤紫色の斑点があり、萼片にも赤紫色の斑点がある。

 

2012/4/19

よく見かけるスミレの1つですが、神社の境内で撮影したものです。

2013/3/12

多摩川への道路脇で、コンクリートの隙間から生えていたヒメスミレを見つけました。

葉の数より花の数の方が多いくらいで、1株だけ、ポツリと生えていました。

2013/3/28

やはり、多摩川への道路脇で見かけたヒメスミレです。この株も花は多いですね。

2014/4/14

ヒメスミレの特徴的な部分を並べてみました。

葉は、細長く尖った披針形で、葉柄には翼はありません。

花色は、濃紫色で、距は細長く白地に赤紫色の斑点(見た目はピンク)、側弁には毛が生えています。


アケビ(Akebia quinata)

<キンポウゲ目・アケビ科・アケビ属>

       雄花       花序に付く2個の雄花と3個の雌花      雌花

アケビ科アケビ属の蔓性落葉低木で、茎は蔓になって他物に右巻きで巻き付き、古くなると木質化する。

日本では、本州から四国、九州の山野に自生している。

葉は互生し、楕円形の小葉5個が掌状に付く複葉で、小葉は先端がくぼみ、基部はくさび形、縁は全縁。

花期は4月~5月で、花は雌雄同株ではあるが、雌雄異花で、花序の先に数個の雄花、基部に雌花が数個付く。

花は淡紫色で花弁がなく、花弁のような萼片が3個あり、雌花は雄花より一回り大きく、直径は30mmほど。

雄花では、6個のオシベの先端がくっついて丸くなっているが、雌花では、太いメシベが放射状に開いている。る。

 

2014/4/23

多摩川への道路脇で、キヅタの中から淡紫色の変わった花が垂れ下がっていました。

キヅタの花ではないのですが、周りで目に付くのはキヅタの葉ばかりでした。

後で調べて、アケビの花らしいことは分かったのですが、葉が分からないので種類までは特定できませんでした。

2014/4/23             2014/5/9            2015/4/2

2014/5/9 後日、改めて調べてみて、キヅタとアケビとツタが絡まり合っている事が分かりました。

たまたま、花の咲いていた所はアケビの太い茎のみ残して、他の枝が全て剪定されていました。

そのため、キヅタの葉の間から、アケビの花のみが覗いていたようです。

少し離れていたところでは、アケビの葉が確認できました。

2015/4/2 今年もアケビの花序が見られました。まだ、ツボミは固く、開花はまだ先です。

開花を楽しみにしていたのですが、その後、大きく剪定されてしまいました。


ムベ(Stauntonia hexaphylla)

<キンポウゲ目・アケビ科・ムベ属>

アケビ科ムベ属の常緑つる性木本植物で、在来種。トキワアケビの別名を持つ。

日本では、本州関東以西から四国、九州に分布し、海外では中国、台湾に分布する。

奇数枚の小葉からなる掌状複葉で、成長に伴い3枚、5枚、7枚と増える。小葉の裏側には網状の葉脈がある。

花期は5月で、雌雄同株。雌花の方が少し大きい。花弁はなく、花弁に見えるのは6枚の萼片。

果実は、7cm前後になり、11月頃に熟して赤紫色になる。

果実は、アケビに似るが、果皮が薄いため、アケビのように裂けない。

熟した果実の中には、多くの黒いタネと白っぽい果肉がつまっており、果肉は甘い。

しかし、果肉は種子にしっかりと着いており、食べにくいのが難点。

 

2015/4/1

多摩川への道路脇の公園で、ムベがたくさんツボミを付けていました。

新葉も出たばかりで、淡いえんじ色を帯びた新葉も、まだ、開き切っていません。

そんな中、気の早いツボミが開きかけていました。

2015/4/9

たくさんの花が咲き始めました。咲いた直後はほぼ真っ白です。

時間が経つにつれ、萼片の内側に茶花色の色が付き始め、最後は全体が茶褐色になります。

2015/4/22

ムベの花もほぼ咲き終わりに近くなり、多くの花は茶褐色が入っています。

新葉もしっかりと展開し、瑞々しい淡緑色の小葉が目にも鮮やかです。

2015/5/8            2014/5/21          2014/6/8         2015/6/29

2014/7/28         2014/9/3         2014/10/5          2014/10/27

花後、小さな果実がたくさん付いていました。

その後、数が徐々に減り、それとともにどんどん大きくなっていきます。

10月に入ると、熟して垂れ下った果実に、黄色みが出てきました。

10月も下旬になると、成熟が進み、かなりか赤みが付いてきました。

順調にいけば、11月には熟して食べ頃になるでしょう。


セイヨウオダマキ(Aquilegia valgaris)

<キンポウゲ目・キンポウゲ科・オダマキ属>

キンポウゲ科オダマキ属の多年草で、ヨーロッパ原産の園芸品種。

茎は数十cm程になり、真っ直ぐに伸びた茎の先に十輪程の花を下向きにつける。

萼片は広卵形で大きく開き、花弁は円筒状にまとまってつく。

その花弁の基部から、距が萼の間から角のように突き出している。

和名は、この花の形が麻を紡いだ糸を巻く苧環に似ていることに由来する。

元の花色は青紫色だが、白、ピンク、赤紫、黒紫色とバラエティに富んだ花色のものがある。

なお、最近は北米産の大輪の品種との交配種が、セイヨウオダマキとして出回っている。

果実は袋果で、先のとがった筒を5本束ねたような形で、上を向いて付く。

プロトアネモニンを含むため全草が有毒で、皮膚炎、胃腸炎、心臓麻痺などの症状が出るので要注意。

 

2014/5/8

多摩川への道路脇の公園で見かけたセイヨウオダマキです。

青紫色のものと、ミヤマオダマキのように花弁の先が白くなるものが咲いていました。

その独特の形状の花は、一度見ると忘れることはないでしょう。

2014/5/9

セイヨウオダマキのツボミ、開花した花、果実です。

ツボミの時から花弁の距は、萼片の間から飛び出しています。

果実の形状も、向きは逆ですが、ツボミの形に似ていますね。


キツネノボタン(Ranunculus silerifolius)

<キンポウゲ目・キンポウゲ科・キンポウゲ属>

キンポウゲ科キンポウゲ属の多年草で、在来種。

キツネノボタンを無毛の変種(Ranunculus silerifolius var. glaber)とせず、

ヤマキツネノボタンを母種とする広義のキツネノボタンとする分類が一般的。

日本では、北海道から本州、四国、九州の路傍や溝などの湿地に普通に自生する。

草丈は15~80cmで、茎はよく分枝して、斜上する毛があるが、無毛に近いものもある。

葉は1~2回3出複葉で、小葉は卵形で3深裂し、裂片には不揃いな鋸歯がある。

茎葉には短柄があり、3出複葉。ただし、上部の茎は単に3深裂する。

ヤマキツネノボタンと比較して、葉幅が広い。

花期は4月~7月で、茎の上部に直径10mmほどの黄色い花をいくつか付ける。

花弁は5個で光沢があり、萼片も5個で、オシベ、メシベは多数ある。

集合果は球形で、花床に短毛がある。個々の痩果は扁平な広倒卵形で、長さは3mm強ある。

この痩果の先の曲がり具合をキツネノボタンとの識別点としていたが、変異が多く、近年は使われない。

痩果の断面形状で、片側のみ3稜で、反対側は1稜のものが本種やヤマキツネノボタンである。

ケキツネノボタンは両端とも3稜があるので、見た目が扁平になる。

 

2013/4/23

多摩川の土手を散歩中、土手のハマダイコンに交じって、キツネのボタンが1株花を付けていました。

キツネのボタンは、田の畔などでよく見かける植物です。

それが、湿り気の多いとは言えない土手の則面で生育していたのは意外でした。

周りにハマダイコンが密生しているので、適度な湿り気があったのかもしれません。


ヒメウズ(Semiaquilegia adoxoides)

<キンポウゲ目・キンポウゲ科・ヒメウズ属>

キンポウゲ科ヒメウズ属の多年草で、在来種。

ヒメウズ属は1属1種で、学者によってはオダマキ属に分類される。

日本では、本州の関東以西、四国、九州、南西諸島に分布する。

海外では、朝鮮半島から中国に分布する。

地下に長楕円形の塊茎を作り、その先から根出葉と花茎を出す。

茎は30cm前後までになり、細くて軟毛があり、上部で分枝する。

根出葉は長い葉柄があり、1回3出複葉で、小葉は2から3裂する。

茎葉は少なく、上部になるほど葉柄は短くなる。枝先に下向きに直径5㎜程の花を付ける。

花弁に見えるのは萼片で、長さ5㎜程の長楕円形で、淡紅紫色。

その内側に淡黄色の花弁があり、下部は筒状で、極短い距がある。

オシベは10本前後、メシベは2~4本あり、袋果は上向きに付く。

花の特徴はオダマキ属とほぼ同じであり、そのため、オダマキ属に分類されていた。

しかし、距は無いに等しいくらい短いことから、ヒメウズ属に分離されたが、学者によって扱いは異なる。

 

2014/5/8

いつも散歩のときに通る道端で、小さく華奢な花を見つけました。

花は全て下向きに咲いていたので、無理やり上に向けて撮ったのが、中央の写真です。

後で、写真を拡大したとき、距は短いもののオダマキに近い形状をしています。

それで、オダマキの仲間を調べて本種と分かりました。

しかし、属名がオダマキ属であったり、ヒメウズ属であったり、バラバラです。

さらに調べていくと、上記のように学者によって分類が異なるためと分かりました。


クサノオウ(Chelidonium majus var. asiaticum Chelidonium)

<キンポウゲ目・ケシ科・クサノオウ属>

ケシ科クサノオウ属の越年草で、ユーラシア大陸一帯とその周辺に広く分布する。

日本では、北海道から九州まで分布している越年草で、秋に発芽して、越冬し、春に開花する。

海外では、朝鮮半島から中国、ロシアに分布し、ヨーロッパや北アメリカにも帰化している。

草丈は30~80cmで、全体に長い白毛が生え、白っぽく見える。

葉は互生し、長さ10~30cmで、羽状に1~2回分裂し、葉先も裂片も丸い。

花期は4月~7月で、茎頂に散形花序を付け、数個の鮮黄色の花を付ける。花柄は細長い。

花は直径20㎜前後の4弁花で、多数のオシベの中心にメシベが1個ある。

メシベの花柱は短く、その下部にくねくねと曲がった長い緑色の子房がある。

2個の萼片には多数の毛が生えており、開花と同時に落下する。そのため、花には萼片は見られない。

果実は蒴果で、長さは数cmの細長い円柱状になる。種子は熟すと黒くなり、種枕が付く。

本種を傷つけると多種にわたる有毒アルカロイド成分を含む黄色い乳液が出て、皮膚に付くと炎症を起こす。

 

2012/4/6

散歩コースの多摩川では、河川敷ではなく、土手の道路脇で見つけました。

黄色で、比較的大きな花なので、遠目にも目立つ花です。

この花を最初に見たとき、雌しべがグニャリと曲がった変わった花というのが、その印象です。

2013/3/29

多摩川への道路脇で、ムラサキケマンの隣でクサノオウが花を咲かせました。

花が咲いているのは、この1輪だけで、後はまだツボミのままでした。

2013/4/12

クサノオウも、2週間でずいぶん大きくなり、花もたくさん咲かせていました。

ムラサキケマンと混生していますので、結構にぎやかです。


ナガミヒナゲシ(Papaver dubium)

<キンポウゲ目・ケシ科・ケシ属>

ケシ科ケシ属の越年草。地中海沿岸から中欧が原産の帰化植物。

アルカリ性土壌を好むようで、コンクリートによってアルカリ化した路傍などで繁殖しやすい。

草丈は20~60cmで、葉や茎にはやや密に毛が生える。

根生葉はロゼットを形成し、1~2回羽状深裂して葉柄はない。茎葉は互生し、羽状に深裂する。

花期は4月~5月で、花茎を立ち上げ、茎頂に直径2~5cmの4弁花を付ける。

花色は橙紅色~紅色で、中央部のめしべの花柱はなく、柱頭は4~8本の筋が放射状に伸びる。

黒っぽいオシベは多数あり、円筒形の子房はこのオシベに囲まれる。

果実は長さ15~25mmの長楕円形の孔開蒴果で、熟すと上部に隙間の孔ができる。

種子は長さ0.7mm前後で、表面に網状脈があり、果実当り約1,600個入っている。

その約20%が10月に発芽して越冬し、さらに20%が4月に発芽する。

残りの60%は休眠しており、翌々年以降に順次発芽する。5年後の発芽も確認されている。

本種には、アレロパシーがあり、根と葉からは周辺の植物の生育を強く阻害する成分を出す。

なお、本種には「subsp. lecoqii」と「subsp. dubium」という2種類の亜種がある。

両種とも、国内に分布しており、前者の花弁は平開して、花弁の間に隙間ができる。

一方、後者の花弁は平開までせず、花弁が重なるように咲く。茎内の乳液の色も異なる。

 

2012/4/18

花色が目立つのも一因かもしれませんが、あちこちで目にする事が多くなった気がします。

1つの芥子坊主に1,000個以上の種子がはいっているので、条件が良いと大繁殖する事があるようです。

2013/4/11

今年も、あちらこちらでナガミヒナゲシが花を咲かせています。

比較的小さな花ですが、色が目立つので、かたまっていると存在感はあります。

2013/4/25

花の写真ばかりでしたので、名前の元になった芥子坊主の写真も掲載します。

ほっそりとして長いのが分かると思いますが、長い実で「ナガミ」です。

ついでにツボミの写真も掲載します。下を向いたツボミが、開花が近づくと上を向いてきます。

2014/3/18            2014/4/4             2014/4/11

3/18 進入禁止の杭の根元で、厚ぼったい小葉が浅く三裂する葉を見かけました。

この時点では、何の葉なのかまでは分かりませんでした。

4/4 気が付くと、浅く三裂していた葉は、細かく、深く切れ込みのある小葉になっていました。

良く見ると、毛が密生したツボミが見えます。この時点でナガミヒナゲシと判断しました。

4/11 花茎が長く立ち上がり、ツボミは深く首を垂れ、丁寧にお辞儀をしているよう。

2014/4/15

いくつかの花が咲き、既に散った花もありました。

萼を破り、レンガ色の花弁が覗いているツボミ、この後、萼は剥がれ落ちて開花します。

多数のオシベ(花糸は紅紫色)と中央の大きな子房、その上面に放射状の柱頭(花柱は無い)が特徴です。


キケマン(Corydalis heterocarpa var. japonica)

<キンポウゲ目・ケシ科・ケマンソウ亜科・キケマン属>

ケシ科キケマン属の越年草で、在来種。

日本では、本州の関東以南、四国、九州の海岸や低地に自生する。

草丈は40~60cmで、赤みを帯びた茎は柔らかくて太く、根本から分枝する。

葉は互生し、白緑色~淡緑色で厚く、長さ、幅ともに10~25cmで、2~3回3出羽状複葉である。

終羽片は卵状くさび形で欠刻がある。春先の葉が展開しきらないものは、より白っぽく見える。

花期は3月~5月で、茎の上部の葉脇から総状花序を出し、長さ2cm前後の黄花を多数つける。

苞は披針形で、花柄は4~6mm。萼片は2個、花弁は4個で、外側の2個は大きく、内1個には距がある。

オシベは6個、メシベは1個、子房は1室。柱頭は2裂し、中央に離れた明瞭な1対の乳頭状突起がある。

蒴果は披針形で幅5mm前後と太く、数珠状にわずかにくびれて種子が2列に入る。

種子は黒色で、表面に細かい円柱状の突起があり、膜状の大きな種沈がある。

 

2014/4/18

どこかに咲いていると思ってましたが、見つけられなかったキケマンの花。

ひょんなことで出会えました。民家の玄関脇で、植栽に隠れるように咲いていました。

いつも通っている場所なのですが、通る方向からは陰になって見えなかったのです。

花は、少しピークを過ぎていましたが、まだ、ツボミも少し残っていました。

2016/4/6

昨年は見られなかったキケマンの花ですが、今年は咲いているのを確認できました。

前回はアップに耐える写真が取れなかったのですが、今回はそこそこの写真が取れました。

花弁は上下の2枚と、真ん中の2枚の4枚ですが、真ん中の2枚は合着しています。

授粉後、子房が大きくなってくると、花弁が根元から外れ、前に付けたまま大きくなります。

2016/4/6

果実が徐々に大きくなっていく様子です。

果実の先に花弁を付けたまま大きくなり、花弁が枯れた頃に落下するようです。

ケマンソウ亜科の花

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケマンソウ亜科の独特な形状の花ですが、花色が異なるのはもちろんですが、花の開き方も異なります。

ムラサキケマンが下唇を大きく開いた大口なら、キケマンは少し開いたおちょぼ口ですね。

ナガミノツルケマンはキケマンと同じ黄色い花色ですが、下唇が大きく、距が下に曲がっています。

透き通るような白に濃赤紫色の口紅を引いたような花は、ニセカラクサケマンです。

ヨーロッパ原産の外来植物で、自宅近くで見かけましたが、まだそれほど広がっていないようです。


ムラサキケマン(Corydalis incisa)

<キンポウゲ目・ケシ科・ケマンソウ亜科・キケマン属>

ケシ科キケマン属の越年草で、在来種。

日本では全国に広く分布していて、海外では朝鮮半島から中国に分布する。

草丈は20~50cmで、塊茎は作らない。傷をつけると嫌な臭いがする。

葉は互生し、長さ3~9cmで2~3回羽状に細裂する。

葉柄は、下部ほど長くなり、下部で5~15cm、上部で1~4cm。

花期は4月~6月で、茎頂に長さ3~12cmの総状花序を付け、多数の花が咲く。

独特の形状の花は長さ12~18mmで、花の先だけが濃紅紫色。

花弁は4個で、左右の内側の2個は先端が合着し、背面に稜がある。

外側の2個は大きく、上部の花弁は基部が袋状の距になって、後ろに突き出る。

この距の中に蜜腺がある。上下の花弁に各々オシベが付き、メシベを挟む。

2個の萼片は花柄の先端にあり、細裂して糸状になっている。

蒴果は柄の先に下向きに曲がって付き、長さ15mm前後の狭長楕円形。

熟すと2裂して、果皮が巻き上がり、黒い種子を弾き飛ばす。

 

2012/4/11

ヒメオドリコソウ(シソ科オドリコソウ属)と同じ場所に混生し、一緒に咲いていることもあります。

花の形は似ていますが、全くの別種(ケマンソウ科キケマン属)です。

なお、根、茎、葉、花と全てに有毒のプロトピンを含むので、要注意です。

2013/3/14            2013/3/21              2013/3/28

3/14 昨年から小さな芽を出していましたが、春が近付くとともにどんどん大きくなってきました。

3/21 1週間で大きく茎を伸ばし、総状花序の1つで花がさき始めました。

3/28 さらに1週間後には、ほとんどの総状花序で花が咲きました。

残念ながら、その後、除草されてしまい、結実までは見届けられませんでした。

2013/4/12

多摩川への道路脇で、ムラサキケマンが大きな群落をつくっていました。

昨年も咲いているのを見かけましたが、来年はもっと増えそうです。

2014/4/7

道路脇で咲いていたムラサキケマンの花をアップで撮ってみました。

面構えは、シソ科の花のようですが、ケシ科の花です。

2015/4/1         2015/4/16         2015/4/16

今年もあちらこちらで、ムラサキケマンが花を付けていました。

例年、除草が行われて種子を見ることはなかったのですが、今年を見ることができました。

さく果は、柄の先に下に折れ曲がって付く豆の鞘のような形をしている。

まだ、さく果は未熟な状態ですが、熟すと2つに裂けて、花被が巻き上がり、種子を弾き飛ばす。